HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52412 Content-Type: text/html ETag: "72dd-18b7-4cdeaaa0b82a9" Expires: Wed, 07 Nov 2012 23:21:49 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 07 Nov 2012 23:21:49 GMT Connection: close 東電OL事件 再審無罪で冤罪の検証が要る : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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東電OL事件 再審無罪で冤罪の検証が要る(11月8日付・読売社説)

 事件から15年を経ての無罪確定である。

 冤罪(えんざい)を引き起こした捜査当局と裁判所の責任は重い。

 東京電力の女性社員が1997年に殺害された事件の再審で、東京高裁は無期懲役となったネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)を無罪とする判決を言い渡した。

 高裁が「第三者が犯人である疑いが強い」と判断した以上、当然の結論と言える。検察は上告する権利の放棄を申し立てた。

 無罪を決定付けたのは、被害者の手の爪に残っていた付着物だ。マイナリさんとは異なる人物のDNA型が検出されていた。

 判決はこの鑑定結果を重視した上で、「女性が首を絞められて殺害される際、渾身(こんしん)の力で犯人の手をつかんで引き離そうとしたと想定される」と認定した。

 弁護側が爪の付着物について、検察側に鑑定を求めたのは、マイナリさんが服役していた2007年1月のことだ。しかし、検察は「爪からは何も検出されていない」と付着物の存在さえ否定する回答をしていた。

 その後、女性の胸などに残された体液から第三者のDNA型が見つかった。これにより、再審開始が決定し、追いつめられた検察は「存在しない」としていた爪の付着物を鑑定した結果、同じ第三者のDNA型が検出された。

 ところが、あきれたことに、検察は「証拠隠しはない」と居直っている。過ちを認めず、冤罪に至った経緯の検証を一切行わない姿勢も示している。

 極めて問題である。

 自分が不利になりそうな証拠は開示しないという姿勢をたださなければ、国民の検察不信は一段と深まるだろう。

 日本弁護士連合会は昨年1月、捜査機関や裁判所から独立した冤罪検証組織を国会に設けるべきだとする提言を発表した。検察が自浄能力を発揮しないのなら、こうした声も無視できなくなろう。

 裁判所も猛省が必要だ。1審の無罪判決を破棄し、逆転有罪とした高裁、その判断を支持した最高裁の誤判により、マイナリさんは長期間、自由を奪われた。

 マイナリさんは検察や裁判所に対し、「どうして私がこんな目にあったのか、よく調べ、よく考えてください」とのコメントを出した。これに応えねばならない。

 警視庁は再捜査に乗り出す方針だ。再審無罪が確定するまでに、新たに見つかったDNA型は、真犯人に結びつく重要な証拠となろう。徹底捜査を望みたい。

2012年11月8日02時00分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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