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またしても、野田首相の任命責任が問われる事態である。来春に開学予定だった3大学の認可をめぐり、文部科学省の方針が二転三転している。先週、省の審議会[記事全文]
中国共産党大会があすから始まり、指導部が世代交代する。トップの総書記の座は、胡錦濤(フーチンタオ)氏から習近平(シーチンピン)氏に引き継がれる。最高指導部の政治局常務委[記事全文]
またしても、野田首相の任命責任が問われる事態である。
来春に開学予定だった3大学の認可をめぐり、文部科学省の方針が二転三転している。
先週、省の審議会が「可」と答申したのを田中真紀子文科相がたった1日でひっくり返し、不認可にした。
そのことが批判を浴びると、田中氏はきのうの記者会見で、「新しい基準のもとでもう一回審査をする」と事実上、不認可の見直しを表明した。
鶴の一声で答申を覆した田中氏のやり方は、あまりにも乱暴だった。誤りを悟ったなら、改めるのは当然のことだ。
ただ、田中氏は「今の設置認可の仕組みの下では新設は認められない」とも述べた。「早めに結論を出したい。年内にできれば一番いい」というが、これで本当に来春開学できるのか、関係者や受験生は心配だろう。
この中途半端な見直しは、田中氏の体面を保ちつつ軌道修正を図る方便ではないのか。そう見られても仕方がない。
「大学の乱立に歯止めをかけて、教育の質を向上させたい」という田中氏の主張には一理ある。だが、それと現行制度にそって申請された3大学を認可するかどうかの判断は別だ。
田中氏と文科省はすみやかに3大学の不認可を撤回し、関係者や受験生に謝罪すべきだ。
ことは、田中氏や文科省の問題にとどまらない。
藤村官房長官は「文科大臣が最終判断されること」と、ひとごとのように語っている。
だが、閣僚としての資質に疑問符がつく田中氏を、あえて入閣させた責任が、ほかならぬ首相にあるのは明らかだ。
田中氏といえば、小泉内閣の外相時代に官僚と激しい立ち回りを演じ、省内を混乱に陥れ、更迭された経緯がある。
そんな田中氏をなぜ、10年ぶりに入閣させたのか。
田中氏が民主党代表選で一部議員らの立候補要請を辞退し、野田陣営の選対本部長代理を務めた「論功行賞」。そして、高い知名度による「選挙の顔」への期待からだった。
内閣改造からわずか5週間。2週間前には、外国人献金や暴力団関係者との交際などで田中慶秋氏が法相を辞任した。
ともに、党内融和とさらなる離党防止を目的とした「内向き」人事の果ての、案の定ともいうべき失態である。
野田政権は末期的状況にあるとの思いが、いよいよ深い。
田中氏と文科省を指導し、一日も早く混乱を収める。首相として、せめてもの責務である。
中国共産党大会があすから始まり、指導部が世代交代する。
トップの総書記の座は、胡錦濤(フーチンタオ)氏から習近平(シーチンピン)氏に引き継がれる。最高指導部の政治局常務委員も大幅に入れ替わる。
新時代の幕開けだが、急激な経済成長の矛盾が噴き出しており、習体制の課題は山積みだ。
胡体制の10年間で、中国は様変わりした。
トウ小平(トウは登におおざと)氏が進めた改革開放が花開き、昨年の国内総生産(GDP)は米国に次ぐ世界2位の47兆元(約600兆円)。10年前のほぼ4倍だ。
都市化も進み、昨年初めて都市人口が農村人口を上回った。中国メディアによると、上海など長江デルタ地域では、1千万元(約1億3千万円)の資産を持つ人が約35万人に及ぶ。
一方で、貧富の格差は深刻だ。単純労働で日銭を稼ぐ農民工など、貧しさから抜け出せない層が多い。
不公平感は強く、デモも頻発している。当局は05年の約8万7千件を最後に発生件数の公表をやめた。公表できないほど多い、ということだ。
党幹部の腐敗は底無しだ。10〜11年に収賄で約3600人が処分され、賄賂の総額は約4億元(約51億円)にのぼった。これも氷山の一角だ。成長の分け前にあずかろうと、だれもが目の色を変えている。
常務委員入りを狙っていた薄熙来(ポーシーライ)・重慶市党委書記が解任され、党籍を剥奪(はくだつ)された事件の衝撃も大きい。高官親族の蓄財も相次いで報じられた。
ここに来て、欧州危機の影響や人件費の上昇で、成長にかげりが出ている。高齢化も急速に進む。「右肩上がり」が実感できなくなれば、党の存在意義は大きく揺らぐ。
共産党も、深刻に受け止めてはいる。胡氏は成長一辺倒の路線を改め、持続的な成長や社会の調和を重視する「科学的発展観」を03年から説いてきた。
しかし、社会の矛盾は覆い隠せないほどに広がった。胡氏の考え方が「指導思想」に格上げされるかどうかが党大会の焦点の一つだが、習氏としては改めて課題に向き合い、踏み込んだ対策を急ぐ必要がある。
中国でも、インターネットで情報が瞬時に伝わる時代だ。住民の反対で、環境汚染の恐れがある開発計画が撤回に追い込まれるなど、上からの指示は絶対でなくなりつつある。
尖閣諸島をめぐる反日デモも社会への不満に突き動かされた面があった。新指導部がどんな中国を目指すのか。日本も無関係ではいられない。