先月末、インドで開かれた生物多様性条約第十一回締約国会議(COP11)は、名古屋のCOP10が残した成果を辛くも引き継いだ。再来年の韓国COP12までに、南北の理解をさらに深めてほしい。
二年前、名古屋のCOP10は画期的な成果を挙げた。
交渉決裂の気配が濃厚だった最終日、長年にわたり遺伝(生物)資源を提供してきた途上国と、消費する側の先進国が劇的に歩み寄り、愛知目標と名古屋議定書の採択にこぎ着けた。
愛知目標は、生き物の絶滅に歯止めをかけるため、国際社会が遅くとも二〇二〇年までに実現すべき、共通の目標だ。強制力はないものの、「少なくとも陸域の17%、海域の10%を保全」といった具体的な数値も織り込んだ。
名古屋議定書は、生物という資源から医薬品などをつくることで得られる利益を、途上国と先進国が公平に分け合うためのルールである。
二年に一度の締約国会議(COP)では、二十項目の愛知目標をどう実現するか、とりわけ絶滅を食い止めるための資金をどうするかが主な議題になった。
国連環境計画(UNEP)などの試算によると、それには毎年、世界中で七百八十一億ドルの予算が必要になるという。
生物資源を奪われ続けたという思いが強い途上国が、先進国により多くの資金を求め、会議は再び南北対立の様相を呈した。この分野で最大の援助国日本も途上国側の要求に抵抗し、「会議の足を引っ張った」と非難を浴びた。
結局、途上国への資金援助を一五年までに二倍に増やし、途上国も適正な予算を確保するとの内容を盛り込んだ文書を採択したが、その方法などは二年後の韓国COP12へ先送りされた形である。
国際自然保護連合(IUCN)はCOP11の会場で「絶滅危惧種が世界で二万を超えた」と訴えた。今この瞬間も貴重な種、貴重な命がこの地球から消えていき、再び戻ることはない。このまま進めば“資源”を失う損失も、ますます膨れ上がるだろう。そのような環境のもとでは人間自身の存在も、危うくなってしまうだろう。
財政難はよく分かる。しかし、愛知目標と名古屋議定書を誕生させた日本として、生物多様性の恵みを受ける企業からの“投資”を呼び込む仕組みなど、新たな資金システムの構築に、国内外で積極的に取り組むべきだ。
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