HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 05 Nov 2012 20:22:31 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: <てのなかにうつくしいていねんをにぎりしめて いきていこ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 <てのなかにうつくしいていねんをにぎりしめて いきていこうとおもう。うつくしいていねんは しんじつそのものです。くるしみのなかで ひかりかがやいています>▼美しい諦念を握り締めて生きる。この言葉を書いたのは十五歳の少年だ。臼田輝(ひかる)君は一歳になる直前、都内のマンション五階から落ちた。動くことも、話すこともできなくなった。母の真左子さんは「心も身体も毀(こわ)れてしまった」と思った▼数年たって、彼の目が輝く瞬間があることに気づいた。鏡を覗(のぞ)き込むように瞳を見つめなければ、気づかない光だ。十三歳で指先の微細な動きでひらがなを表示する装置に出合い、光は言葉となった▼<へいわがくればいい/うちゅうがえいえんにじかんのあるかぎり/いつのひか ちいさないのちがうまれて/そだっていくように>▼その言葉に、みんなが驚いた。真左子さんは言う。「やっと命をつないで生きている子どもたちは、喜びと悲しみは隣り合わせだと知っている。輝もすべてを受け入れていたのでしょう」▼<てのなかにあるしんじつは さいわいそのものです。のぞめばいつでもてにはいりますが だれもこのことはしりません。なぜならにんげんは つねにらくなみちのほうをこのむからです。いきるということは くなんとなかよくしてゆくことなのです>。輝君は十六歳で天に召された。

 

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