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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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「象牙の塔」にも例えられる権威や閉鎖性のゆえか、大学は往々、皮肉めいて云々(うんぬん)されてきた。評論家の大宅壮一は、戦後の新制大学を「駅弁大学」と揶揄(やゆ)した。駅弁を売っている駅のある所は大学があるという、急増ぶりへの当てつけである▼その後、「女子大生亡国論」というのもあったし、筆者の学生時代には「レジャーランド化」とたたかれた。むろん、もっと高尚な批評もあって、三木内閣時代に民間から文部大臣になった永井道雄は「いまの学校は西洋の中世末期の教会に似ている」と評したそうだ▼中世の末期、教会は金集めのために免罪符を乱発した。教会が栄えて宗教は衰えた時代といわれる。永井のたとえは、免罪符を「卒業証書」に置き換えて、学校のありようを憂えたものであったらしい▼似たような憂いに、田中真紀子文科相が駆られるのは分かる。いまや大学は全国で800近くに増え、一方で少子化が進む。私大の4割は定員を割って、「広き門」を入ってくる学生の学力はおぼつかない▼それは分かるが、来春開校予定の3校を不認可にしてしまっては「暴走大臣」だろう。一般論で一理あっても、3校に落ち度はない。ちゃぶ台返しをリーダーシップと勘違いしては困る。将来のための変革を言うなら、正面から変えてほしい▼昨今、大学は就職予備校のようになり、本来の教育が空洞化しているともいう。憂える人は多いはずだ。一石投じたのを良しとして、覆水を盆に返す手も、なくはなかろう。