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関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内にある断層は、地面を大きくずらす危険な活断層なのか。原子力規制委員会が現地調査し、評価会合を開いた。問題の断層「F―6」につい[記事全文]
また、沖縄で米兵による事件がおきた。米兵と軍属らを特別扱いする日米地位協定を改定する必要がある。本島の読谷村で真夜中に、酒に酔った米空軍兵が、建物3階にある民家に押し入[記事全文]
関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内にある断層は、地面を大きくずらす危険な活断層なのか。
原子力規制委員会が現地調査し、評価会合を開いた。問題の断層「F―6」について二つの点が明らかになった。
一つは断層が12万〜13万年前以降にできたものであるという点だ。原発の耐震設計審査指針が活断層と判断する基準にあてはまる年代の断層であることで、委員の見解は一致した。
もう一つは活断層であることを否定できないという点だ。委員からは地滑りによる断層ではないかとの意見も出た。検討は今後も続くが、現時点では活断層説を打ち消す証拠はない。
関電は地層の年代や地質などから活断層ではないと主張してきた。だが、今回の調査でその主張は大きく揺らいでいる。
原発の下で活断層が動けば、主要施設が損壊し、大事故につながる恐れもある。活断層の疑いがある以上、すみやかに大飯原発の運転を止めて、詳細な調査に入るのが妥当だろう。規制委は、関電に停止を指導すべきである。
そもそも大飯原発は夏の需要のピークにあわせ、政府が暫定的な安全基準をつくって特例的に再稼働させた。本来なら、電力逼迫(ひっぱく)の心配が去った秋には停止すべきだったものだ。
活断層問題が浮上したのは、東日本大震災の後、旧原子力安全・保安院が過去の資料を精査した結果、安全性を疑わせるデータが次々と出てきたからだ。電力会社の甘い想定や旧保安院の審査のあり方の反省の上に、今回の調査があることを忘れてはならない。
委員からはわずか1日の現地調査では結論を出せないとして、長期的な再調査を求める声もあがる。もちろん、拙速に結論を急いではいけない。
だが、学術的確証を得られるまで調査して結論が先送りされるのでは、不安な状態が続く。目の前にあるのは、原発直下の断層の危険性について判断しなければならない重い現実だ。
委員の中には公開の場では議論しづらいとの声もあるが、規制委の会合の公開は大原則だ。安全最優先の基本から堂々と議論し、決めることで規制委の信頼確保につながる。
一定の調査と検討の後もなお、意見が割れることもありうる。その場合、安全側に配慮して「黒」とすべきである。事故が起きた時の影響の重大性を考えれば、それが当然の判断だろう。規制委には、その一線を譲らないでもらいたい。
また、沖縄で米兵による事件がおきた。米兵と軍属らを特別扱いする日米地位協定を改定する必要がある。
本島の読谷村で真夜中に、酒に酔った米空軍兵が、建物3階にある民家に押し入り、男子中学生を殴ってけがをさせた。
同じ本島中部で米兵2人が卑劣な集団強姦(ごうかん)致傷事件をおこしてひと月もたっていない。
異常事態だ。仲井真弘多(ひろかず)知事が「日米同盟にもひびが入る」と警告したのは当然だ。
日米地位協定は、公務中でない米兵や軍属らが基地の外で罪を犯した場合、日本に優先的な裁判権があると定めている。
ただし米軍が管理する場所に容疑者が入れば、日本の検察が起訴するまで米軍が身柄を拘束できる。つまり捜査に必要でも日本側の判断で逮捕できない。
今回の事件では、米兵が逃げようとしてけがをし、米軍の病院に運ばれた。本来なら、通報で駆けつけた警官に現行犯逮捕された事例だろう。
沖縄県警はきのう、米軍の同意を得たうえで、容疑者米兵から事情聴取した。日本側は身柄引き渡しを求めるのが筋だ。
それなのに藤村修官房長官は「起訴前の身柄引き渡しを要請する必要はない」と話す。
17年前の少女暴行事件の後、地位協定の運用改善というかたちで、起訴前の身柄引き渡しが可能になった。とはいえ凶悪な犯罪の場合が基本で、あくまでも米側の配慮による。
たしかに、罪名のうえでは凶悪犯罪ではないかもしれない。だが、事件が頻発するなかで、寝ているときに屈強な男に侵入され、乱暴をはたらかれた恐怖はどれほどか。
そんなことが自分の家でおきたら。そう考える必要がある。
地位協定で米兵らに様々な特権がある。たとえば米軍が公務中といえば、基地外の犯罪でも日本の法律で裁けなくなる。
沖縄戦の歴史から「ここは米兵の血によって勝ち取った島」とみる占領者意識が今もありはしないか。地位協定に守られている特権意識とともに事件を誘発していないか。
今年はこの事件で断ったが、読谷村はこれまで、地元の祭りに米軍司令官を来賓に招き、兵士の来場も歓迎してきた。日本の多くの人が米国との関係を大切だと考えている。それは従属の関係ではない。
安全保障問題や外交で日本の主権をいう政治家が、国内の主権が制限された地位協定の問題を避けるのは不思議だ。
民主党の公約には「地位協定の改定を提起する」とある。