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天声人語

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2012年11月4日(日)付

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 50年前の全日本自動車ショーで、トヨタはドアのない車を世に問うた。大衆車を2人乗りの未来風スタイルに仕立てた、パブリカスポーツだ。戦闘機のように、屋根ごとずらして乗り降りする仕組みで、2台のみの試作だった▼今はなきこの車を、今年夏、「愚かな車好き」を自称するトヨタOBらが復元した。残る図面や写真を元に、5年がかりで組み上げたそうだ。同好のひいき目を割り引いても、それだけの価値はある▼パブリカスポーツの斬新さは、ショーの話題づくりに終わらず、1965年のトヨタ・スポーツ800に結実する。時代を画した車は好き嫌いが分かれるものだが、愛称「ヨタハチ」を悪く言う人を知らない▼後に80点主義と評される会社にしては珍しく、技術陣が「まじめに遊んだ」一作である。さすがにドアはついたが、優れた空力デザインと軽量が非力を補い、評論家の徳大寺有恒氏によればミズスマシのごとく走った▼以後、国産車は大きく華美になるばかり。小型スポーツカーは定着しなかった。くねる道を人車一体で駆ける楽しさを知らずに、車社会は老いへと向かう。内に成熟市場、外には過当競争。車のみならず日本メーカーをさいなむ虎狼(ころう)である▼名だたる家電ブランドの苦境も、内外の消耗戦の結果だ。抜け出すには、青いが熱かった半世紀前に立ち返るのも手だろう。「こんなものができたら面白い」と。今昔の車好きを夢中にする遊び心こそ、ものづくり再生のカギに思えてならない。

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