HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 51400 Content-Type: text/html ETag: "e866d3-3ab9-4f7b9740" Expires: Sat, 03 Nov 2012 20:21:01 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 03 Nov 2012 20:21:01 GMT Connection: close
大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
|
AIJ投資顧問による年金消失で苦境が表面化した厚生年金基金制度について、厚生労働省は10年かけて廃止する方針を試案として公表した。当然の流れだ。評価したい。[記事全文]
一定の基準を満たすNPO法人などに寄付した際、我が国でも世界有数の税制優遇を受けられるようになった。このことをご存じだろうか。民主党政権は昨年夏と今春の2段階で、新たな[記事全文]
AIJ投資顧問による年金消失で苦境が表面化した厚生年金基金制度について、厚生労働省は10年かけて廃止する方針を試案として公表した。
当然の流れだ。評価したい。
焦点は、基金が厚生年金の保険料の一部を国に代わって運用する「代行部分」である。
580弱ある基金のうち約半数は、手持ちの資産が国に戻すべき金額を下回る「代行割れ」に陥り、総額1兆1千億円の穴が開いている。
基金を解散する場合、本来なら、その母体企業と従業員が穴を埋めて国に返上すべきだ。
ところが、基金の多くは同業の中小企業が集まってつくっており、お金を出す余裕がない。その結果、傷口が広がる。
このため試案では、代行割れ基金の解散に向けて、5年間の時限措置を用意した。
まず連帯債務の廃止だ。今は基金の加入企業が倒産すると、その企業が国に負っている債務を、同じ基金の残りの企業が引き継ぐが、それをやめる。
連帯債務を負うと、いくら返しても借金が減らず、連鎖倒産を招きかねないためだ。
倒産で開いた穴は厚生年金本体で埋める。基金と関係ない厚生年金の加入者が肩代わりする形になるが、やむをえまい。
試案はさらに「債務を国に返済する期間を現在の最長15年から延長する」「債務に上限を設ける」との選択肢を示した。
返済期間の延長は必要だろうが、最初から債務に上限を設けるのには反対だ。
すでに基金を解散し、債務を全額返した企業との不公平感、「借りたカネは返す」という原則を揺るがすことなど、問題が多い。
どのようなケースに、この「徳政令」を使おうと想定しているのか、厚労省は明確に説明すべきだ。
基金制度そのものの廃止に対しては、代行割れしていない基金から「代行部分がなくなると運用資金が減り、スケールメリットが働かない」などと反対する意見が根強い。背景には、受託金融機関や各基金事務局の利害が透けて見える。
しかし、厚労省の試算では、資産が潤沢で「1年後の代行割れの確率がほぼゼロ」の基金は74、「2年後もゼロ」だと40しかない。
いくら健全に見えても、運用の失敗や母体企業の経営悪化などで、将来、代行割れに陥る可能性は残る。そうなれば、今と同じ状況に陥ってしまう。
厚生年金基金は、ここできっちり廃止を決めるべきだ。
一定の基準を満たすNPO法人などに寄付した際、我が国でも世界有数の税制優遇を受けられるようになった。このことをご存じだろうか。
民主党政権は昨年夏と今春の2段階で、新たな寄付優遇の仕組みを整えた。条件がそろえば、最大で寄付した額のおよそ半分が所得税と住民税の減税のかたちで戻ってくる。
誰もが市民活動に参加し、行政や企業とともに社会の担い手になる――そんな「新しい公共」の実現をめざし、活動の場となるNPOなどを民間の資金で後押しするのがねらいだ。
内閣府によると、全面的に新制度になった4月から8月までに寄付優遇の認定を申請したNPO法人は118で、旧制度だった前年同期の申請数の8倍に達した。10年続いた旧制度で認定を取った法人は300に及ばず、4万を超える全体の1%にも満たなかった。新制度の滑り出しはまずまずのようだ。
税制優遇の拡充とともに、NPOが寄付優遇の認定を受けやすくする工夫が凝らされたことも大きい。新制度で認定にまでこぎつけた法人は、すでに10を超えている。
高齢者らの支援活動をしている群馬県の法人は、「年平均で1人あたり3千円の寄付を100人から集める」という新たな認定基準を使った。以前は「寄付額が収入総額の5分の1以上」という基準だけだったが、小口の寄付をこつこつ集めることでも認定が可能になった。
障害者を支援する愛知県の法人は、自治体の条例指定で基準を満たしたとみなされる制度を利用した。長崎県の法人は「仮認定」制度を使った。まず認定を受けてから基準を満たすよう寄付集めに励む仕組みだ。
まだまだ課題もある。
旧制度では国税庁が認定作業をしていたが、新制度で都道府県・政令指定市に移った。
活動現場に近い視点をいかせるメリットがあるが、不慣れな作業とあって、逆に認定が滞ることも少なくないという。自治体間のばらつきも改めなければならない。
寄付の前提はNPO法人への信頼であり、何よりも情報公開が欠かせない。内閣府は一覧できるサイトを立ち上げたが、情報が乏しい。会計情報なども加えて充実させてほしい。
東日本大震災では、NPOをはじめ多くの団体が被災者の支援に活躍する一方、空前の寄付が集まって「寄付元年」と呼ばれた。
新たな制度もいかし、この機運を定着させたい。