いったい何のための駐留なのか。沖縄県読谷村で起きた酒に酔った米兵による住居侵入、傷害事件。夜間外出禁止令はあっさり破られた。規律を守れない軍隊なら、基地は閉鎖するしかあるまい。
綱紀粛正は口先だけだったのかという怒りが湧いてくる。日本と極東の平和と安全を維持するための在日米軍が、日本国民たる沖縄県民の平穏な生活を脅かす存在になっている現実から、目を背けてはならない。
米兵が所属する米空軍嘉手納基地の副司令官は「極めて遺憾」とする声明を出したが、もはや遺憾では済まない段階にきている。
酒を飲むことはよい。しかし、酒にのまれて暴れてはいけない。ましてや他人の住居に無断で侵入したり、就寝中で無抵抗の中学生を殴るなどは言語道断だ。
さらに深刻なのは、米兵が夜間外出禁止令を破ったことだ。この禁止令は、沖縄で先月起きた米兵二人による集団強姦(ごうかん)致傷事件を契機に、すべての在日米軍人を対象に発令されていた。
米軍は軍紀の乱れを深刻に受け止め、確実に実効性のある再発防止策を直ちに講じるべきである。
ただ米軍側が、在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県民が抱く基地の重圧感をどこまで理解しているのか、甚だ疑問だ。
日米両政府は、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)配備に当たって、事故が多発している垂直離着陸モードでの飛行は米軍施設・区域内に限定することや、午後十時以降の夜間飛行訓練を制限することなどで合意した。
しかし、「できる限り」「必要最小限」などの留保が付いているため、合意破りの飛行が多数目撃されている。これではだまし討ちと同じではないのか。
日本政府は独立国家として、外国軍である米軍の身勝手な振る舞いをこれ以上許すべきではない。
中学生を殴った米兵は米海軍病院に入院しており、身柄は米側にある。米軍は捜査に協力的というが、日本の検察が起訴するまで米側による容疑者の身柄拘束を認めている日米地位協定も、米兵による事件・事故を多発させる遠因となっているのではないか。
野田佳彦首相が先頭に立ってやり遂げるべきは、消費税増税などではない。沖縄県内に基地が集中する在日米軍の在り方の見直しであり、治外法権的な日米地位協定の改定だ。なぜなら、それらは民主党の衆院選公約だからである。
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