最終回二死。勝利を待ちわびる声がスタジアムに響く。「あと一人!」「あと一人!」。ひいきのチームの勝利を目前にした「あと一人」コールは球場のファンの心を一体化させる▼「あと六人…」「あと六人…」。こちらはため息が聞こえてきそうだ。離党者が膨れ上がった民主党は、衆院で与党の過半数割れが現実味を帯びてきた。離党予備軍と色分けされる議員を数える執行部の苦い表情が浮かぶ▼ようやく召集された臨時国会で、参院は野田佳彦首相の所信表明演説を拒否し、各党の代表質問も行われない。憲政史上、初めてのことだという。野党の対応も情けないが、問題の根本は解散を先送りし、延命を目的化している野田政権の政治姿勢にある▼「憲政史上初」に触発され、国会近くにある憲政記念館に寄ると、来月八日からの特別展「昭和、その動乱の時代 議会政治の危機から再生へ」の準備が進んでいた▼初の普通選挙の実施は昭和三年。それ以降の政党内閣の崩壊や軍部の台頭による翼賛政治、そして敗戦後の政党政治の復活−という議会の歩みを貴重な資料でたどる▼昭和十五年、泥沼と化した日中戦争の処理策を国会で問いただした「反軍演説」で斎藤隆夫は除名処分になった。その「除名通知」も展示される。演説に命をかけた斎藤がいたら、除名という言葉が軽くなった政界に何を思うだろう。