HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 29 Oct 2012 00:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 「集団で技を学ぶには不揃(ふぞろ)いな子がいたほうがいい…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 「集団で技を学ぶには不揃(ふぞろ)いな子がいたほうがいいと思っています。年齢も経歴も性格も育ちもさまざまな子が、たがいを見ながら、自分の道を歩んでいくことができるからです」▼法隆寺最後の宮大工西岡常一の唯一の内弟子を務めた後、「鵤(いかるが)工舎」を設立した小川三夫さんの言葉だ。塩野米松さんが聞き書きした『不揃いの木を組む』(文春文庫)から引いた。宮大工の世界にとどまらない知恵が詰まっているように思う▼鵤工舎での修業は十年間。長い年月は、隠し事や自分を飾ることは意味がない、と教えてくれる。修業に耐え抜いた若者には優しさが生まれ、心にはゆとりが出てくるという▼「学校でも器用な子のほうが先生には喜ばれるわけだよ。学校は促成栽培だから、器用なやつほど成績がよくて、いい子なんや」。早く簡単に仕事を済ませる要領の良さは、職人の世界では結局は損をするという。物づくりや職人世界では、「絶対あかんことだ」と小川さんはいう▼法隆寺や薬師寺の塔を内部から見ると、不揃いな材木でつくられ、一本一本が支え合って立っている。宮大工の世界では「総持ち」という言い方をするそうだ▼今の教育は目に見える成果ばかりを求めていないか。「急いだら人は育たんで。不揃いの中で育つのが一番や」。総持ちの思想からは遠くなったこの社会で、棟梁(とうりょう)の言葉は重く響く。

 

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