HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 27 Oct 2012 21:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 後藤貴子さん(50)が小学生になって初めて書いた詩は、た…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 後藤貴子さん(50)が小学生になって初めて書いた詩は、たった三行だった。<おかあさんはでぶです/すこしやさしいです/ときどきはらまちにつれていってくれます>▼後藤さんの母、門馬由利恵さん(75)は福島県の原町で育ち、隣町の小高で家庭を築いた。患っていた認知症が一気に悪化したのは、原発事故で避難を強いられてからだ▼南相馬市小高区への一時帰宅が許された時、持ち帰ることが許されたのは、大きなごみ袋一枚分だけ。母が持ち帰った物を見て、後藤さんは驚き、切なくなった。財布も服もない。入っていたのは、幼い娘が詩を綴(つづ)ったノートや、ちびた鉛筆…。後藤さんは、四十年ぶりに母への思いを詩にした▼<渡されたゴミ袋一枚に/母の優先順位はくるってる/貴重品も大切にしてた着物も/何も入れずに入らずに/思い出さがすようなものばかり/もう原町には行けないんだねえ/何で認知症になったのかねえ/なんで原発爆発したのかねえ/母のひとりごと>▼原子力規制委が出した事故による放射能拡散予測を見て、慄然(りつぜん)とした人も多いだろう。原発三十キロ圏内に住む人は四百六十万人以上。政府と電力会社は、本当にその生活を守りきれるのか▼福島の事故では今も十五万人以上が避難生活を送る。思い出と切り離されて生きるつらさ、むなしさ。怖いのは電力不足より想像力の不足だ。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo