HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 27 Oct 2012 02:21:50 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:原発避難の子ら 私をぎゅっと抱きしめて:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

原発避難の子ら 私をぎゅっと抱きしめて

 精神科医と学校が連携し、大震災で各地に避難した子どもの心のケアを試みて一年になる。避難者数はなお三十万人余。今、求められるのは、切れそうな心をつなぐ周りの支え合いではないか。

 昨年暮れ、一人の小学一年の女の子がこんな手紙を書いた。

 「『がんばれ日本・がんばれとうほく・がんばれふくしま』ってきくけど、わたしはがんばってます。いっぱいがんばってるのに、もっともっとがんばらなければならないのかなぁ。くにのえらいひとたちももっとがんばってください」(抜き書き)

 震災直後、福島県いわき市から愛知県・三河にお母さんらと難を逃れて来た。避難者を支援する窓口が便りを募っていた。

 「とても帰れそうにないね」。愛知に落ち着いてから原発事故の放射能汚染の怖さがわかった。

 愛知の児童精神科医らが先頭に立ち、各地に散った震災避難の子どもの心のケアで、学校に連携を呼びかけたのが昨年秋。全国組織の日本精神神経科診療所協会(会員約千五百人)は個人開業医が多く、被災地に行くのが難しい。そこで考え出した支援策だった。

 いつも子どもと接し、その微妙な変化に気づくことができるのは教育現場だ。医師側の期待は大きく、うなずける試みだった。だが教育界の閉鎖性は想像を超え、理解ない校長のもとではパンフレットさえ配られないことも。連携の成否の判断は少し先になろう。

 ただ、その中で、子どもや地域をよく知る各校の養護教諭の熱心な協力は心強いという。

 震災から一年半以上たち、避難や移転、転校などで友達や地域と引き離された環境の変化が心の崩れを引き起こす。それが不登校や校内暴力といったかたちで現れている。心の痛みの症状は複雑だ。

 被災地かつ避難地という“二つの顔”を持つ宮城県でも事情は同じだ。石巻などで活動する「こころのケア・ネットワークみやぎ」は「漁業などの復旧が遅く、雇用のあるなしなどで心の問題に格差が生まれてくる。取り組みは最低十五年はかかる」。社会的弱者の子ほど、翻弄(ほんろう)される理不尽さがやりきれない。

 手紙を送った女の子はこの夏、小学校の七夕祭りの短冊に「ふくしまのおともだちにあいたい」と願いを書いた。たまらず担任は、彼女をぎゅっと抱きしめた。

 前もって女性校長が母子宅を訪ね、ねぎらっていた。そんな支え合いで周りが包み込んでほしい。

 

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