<警察・検察の方へ あそんでくれてありがとう>。「犯行声明」の結びの言葉に、かつて社会を震撼(しんかん)させたグリコ・森永事件の犯行グループを重ねた人も少なくないだろう▼「かい人21面相」を名乗るグループが毒入り菓子をばらまいて、企業に脅迫状を送ったのは三十年近く前。警察を翻弄(ほんろう)したこのグループは最初の挑戦状で「けいさつの あほども え…」と挑発した▼他人のパソコンを遠隔操作して、犯罪予告を送り付けた真犯人は「『警察・検察を嵌(は)めてやりたかった、醜態を晒(さら)させたかった』という動機が100%です」と犯行声明に書いた。捜査機関を嘲笑する態度は、かい人21面相とよく似ている▼冤罪(えんざい)をつくらせた後、自ら報道機関などに名乗り出て威信を失墜させる−。そのもくろみは当たった。神奈川県警などに続き、警視庁もきのう、刑事部の幹部が福岡市の男性に誤認逮捕を謝罪した▼真犯人しか知らないはずの詳細な動機を上申書に書いた人もあり、ずさんな捜査が白日の下にさらされた。匿名の海に逃げ込んだ者を特定する捜査は困難が予想され、ほくそ笑む真犯人の姿が浮かぶ▼個人の欲求を満足させるために他人を踏み台にする。そんな卑劣な犯罪は許してはならない。同時に、かくもたやすく市民を冤罪に巻き込む捜査機関の体質は、第三者の目によって厳しく問われなくてはならない。