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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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事件史に太字で刻まれそうな一件である。兵庫県尼崎市の民家床下から出た3遺体を手がかりに、おぞましい大量怪死が見えてきた。別の死体遺棄で起訴された女(64)の周辺には、なおも不明者や不審死が残る▼記事につく相関図は拡大する一方だが、ある家庭が突然、占領される展開は同じ。「進駐軍」の仲間にされた家族が暴れ、類縁が巻き込まれて財産をむしられる。そして用済みになると……。証言から浮かぶのは、軍隊アリを思わせる世渡りだ。その軌跡が発掘されつつある▼派手な服飾で、自宅や車も金ぴかの被告と、取り巻く強面(こわもて)の男たち。その迫力に、やらないと自分がやられると観念したか、肉親に手をあげる人もいたという。脅しすかしによる洗脳がうかがえる▼嫌われまいと上に服従する姿は、過激派やカルトの暴力でも見られた。しかし尼崎の集団を制していたのは、思想や教義ではなく、個人の身体と怒声のようだ。異能と呼ぶのは気が引けるが、良心や道徳を無視できる特異な性格もある▼世には、周囲に迷惑をかけても心が痛まない一群が確かに存在する。へたに関わると、こちらの生活や人生までを破壊してしまう困った人たち。まさに「軍隊アリ」だ▼家庭内の不和を装った、長期にわたる事件と思われる。尻尾をつかんだ警察が巻き返し、幸い、事情を知る面々は司直の手にある。この種の人間から身を守るためにも、なんとか全容を解明してほしい。途方もない相関図を、最後の一筆まで描いて。