HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 40210 Content-Type: text/html ETag: "ddd17f-23ce-884bad00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Wed, 17 Oct 2012 03:21:11 GMT Date: Wed, 17 Oct 2012 03:21:06 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年10月17日(水)付

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 売名が目的なら、ずいぶん安く売ったものだ。いや、高くついたというべきか。iPS細胞の「実用」で騒がせた森口尚史(ひさし)氏(48)である。「気鋭の学者」だったのは1日だけ。氏は手柄話の大半を虚偽と認め、たちまち怪人の扱いとなった▼山中伸弥教授にノーベル賞をもたらした万能細胞を、いち早く治療に使ったとすれば医学史に残る出来事だ。読売新聞が1面トップで報じ、共同通信が追いかけ、配信先の地方紙やテレビ局が伝えた▼うそと分かり、各社はおわびや検証に追われている。記者会見では、質問というより詰問の矢がぶすり、ずぶりと、しどろもどろの藪(やぶ)に突き刺さった。手術は6回ではなく1回、私は見学しただけ、証明は難しいと、発言は後退を続ける▼いずれボロが出る作り話を堂々と語ったのはなぜか。世間の関心は「治療」のてんまつより、森口氏その人に移りつつある。氏の研究には国も助成しており、後始末が大変だ▼多くの難病患者と家族が、iPS細胞に希望をつないでいる。だが、ここで拙速に流れては新技術に傷がつきかねない。病床の思いを誰よりも知る山中さんだが、さらに研究を重ねて万全を期す方針という。雑音に動じず、先を急いでほしい▼それにしても、待つ人の渇望、待たれる者の重圧や覚悟にお構いなしの、はた迷惑な一人芝居を見せられた。森口氏に転職をお勧めした上で、有名大学の肩書、専門家の威光、何より「旬のスクープ」に弱い、我らメディアの習性を戒めたい。

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