人口は約三百二十五万人。静岡県より五十万人だけ少ないEU加盟国だ。外交官の杉原千畝が訓令に背いて、ポーランドから逃れてきたユダヤ難民数千人の通過ビザを発行した国として、日本人にも多少のなじみがある▼そのリトアニアで、原発建設の是非を問う国民投票が実施された。日立製作所が受注の優先交渉権を獲得したビサギナス原発が対象だ。結果は反対が圧倒的多数で投票率も成立要件の50%を上回った▼投票結果には法的拘束力はない。しかし、同時に実施された議会選で、計画の再検討を求めている野党勢力が四年ぶりに政権に返り咲くことが決まり、建設計画が見直される可能性も出てきた▼日本では、ほぼ同じ人口規模の静岡県で先週、中部電力浜岡原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案が県議会で否決された。中部電力や労組から、否決を求める強い働き掛けもあったという▼県民の意思を原発政策に反映させたいと、条例制定に必要な有権者の二・七倍近い十六万五千人を超える人たちが署名した。知事も賛成意見を付したが、大阪市、東京都に続き、議会は民意を直接反映させる手段を封じた▼推進派と反対派が主張をぶつけ合い、住民がエネルギー政策への考えを深めることにも投票の意義があった。「お任せ民主主義」から卒業したい、という思いを奪い続ける議会に未来を託せるのか。