HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 40082 Content-Type: text/html ETag: "78ccea-23f2-4aa01b80" Cache-Control: max-age=3 Expires: Mon, 15 Oct 2012 22:21:08 GMT Date: Mon, 15 Oct 2012 22:21:05 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年10月16日(火)付

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 本音を語って、誰も傷つけない。87歳で亡くなった丸谷才一(まるや・さいいち)さんはスピーチも名人で、それだけをまとめた本がある。悪口を一つ入れたら十か二十ほめるそうだ。ただし、作中の風刺に迷いはなかった▼代表作『女ざかり』の主人公は大手紙の女性論説委員。早々に「新聞の論説は読まれることまことにすくなく、一説によると全国の論説委員を合計した数しか読者がゐないといふ」の一節がある。当方、新刊では噴き出したが、論説に身を置く今は戒めの言葉でもある▼洒落(しゃれ)たユーモア、博識を駆使して随筆、評論、翻訳と広く手がけた。「日本文学の中心には和歌があり、その中心は天皇の恋歌(こいか)」と説く。独特の旧仮名遣いも、40年前の歌論『後鳥羽院(ごとばいん)』から始まった▼引用が旧仮名、他は新仮名という使い分けが面倒で、旧に統一してみたら筆が進む。「後鳥羽院と僕が一つの文明の中で結びつく感じが迫ってきて、いい気持ちだったんです」と、対談で山口瞳さんに明かしている▼文学賞の選考委員として、早くから村上春樹さんを推していたこともよく知られる。「必ずスゴイことになる」と。その人は芥川賞を飛び越し、ノーベル文学賞に擬せられる。我が意を得たりだろう▼かねて「文学者の生涯は、最初から余生を生きているようなもの」と達観していた。昨年の文化勲章にも気負うことなく、「学問も芸術も面白がることが大事です」。世の中を面白がり、それ以上に面白がらせ、長くも濃密な「余生」を完結させた。

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