HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 52927 Content-Type: text/html ETag: "78cced-3ab9-4aa01b80" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 15 Oct 2012 21:21:07 GMT Date: Mon, 15 Oct 2012 21:21:02 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年10月16日(火)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

上関原発―まだつくる気ですか

中国電力による上関(かみのせき)原発(山口県)の建設計画がストップした。山口県知事が、埋め立てに必要な免許の更新をしなかったためだ。枝野経済産業相も、上関を含め未着工の[記事全文]

119番―SOS逃さぬ仕組みを

「救急車じゃなくて、タクシーとかで行きますか?」「あー、はぁ……えー、番号がわかれば自分で行けると思います」119番しても、救急車は来なかった。通報した山形市の大学生は[記事全文]

上関原発―まだつくる気ですか

 中国電力による上関(かみのせき)原発(山口県)の建設計画がストップした。山口県知事が、埋め立てに必要な免許の更新をしなかったためだ。

 枝野経済産業相も、上関を含め未着工の全国9基の原子炉について、設置を認めない方針を打ち出した。

 当然だ。脱原発の具体的な手順を詰め、新しい電源の開発や自由化を進めるうえでも、早く制度改正に着手すべきである。

 ところが、中国電力は「安定供給のために原発は必要」と、あくまで建設をあきらめない構えだ。電力業界も推進姿勢を変えていない。

 まるで原発事故がなかったかのように、原発をつくり続けようとする電力業界の姿勢に驚いてしまう。

 原発を減らすべきだという世論の根っこには、原子力そのものへの警戒感だけでなく、リスクを無視して備えを怠ってきた事業者や原子力行政に対する強い不信がある。

 事故を経て何を反省し、どう自らを変えていくのか。地域独占に守られてきた電力業界は、事故から1年7カ月が過ぎたというのに、なんの総括も実践も示していない。

 むしろ、必要な情報公開を渋ったり、労使で原発維持を政治に働きかけたりと、従来どおりの姿ばかりが目立つ。

 どうやら電力業界には「政権交代で自民党が与党になれば、脱原発は白紙になる」との思惑があるようだ。

 だが、自民党も「原発ゼロ」でこそ民主党と意見を異にするが、以前のような原発拡大路線に復帰できるはずがない。

 そもそも、上関原発は30年前に計画が浮上したにもかかわらず、住民の反対で進めることができずにいた「不良債権」だ。

 原発立地はますます難しくなる。政府の支援は細り、調整すべき「地元」の範囲は広がる。一方、規制は厳しくなり、安全対策の強化や新しい技術の反映にかかる費用が増す。

 何より、廃炉のための引当金すら業界全体として十分に積めていない。今後、原子力は確実に重荷になる。電力システム改革をにらみ、他の電力会社との競争激化にも備えなければならない。

 幸い、中国電力は関西電力などに比べると原子力依存度が低く、財務状況も悪くない。

 着工の見通しすらつかない原発にこだわるより、今ある炉の対策や代替電源の確保、営業力の強化などを急ぐほうがずっと「スマート」な電力会社ではないだろうか。

検索フォーム

119番―SOS逃さぬ仕組みを

 「救急車じゃなくて、タクシーとかで行きますか?」「あー、はぁ……えー、番号がわかれば自分で行けると思います」

 119番しても、救急車は来なかった。通報した山形市の大学生は一人暮らし。9日後に自室から遺体で見つかった。病死とみられる。

 公開された音声記録の声は、とぎれとぎれで痛々しい。

 遺族が起こした裁判で、市は「本人が搬送を辞退した」と責任を否定している。

 当否は司法の判断を待つとして、その前に社会として取り組むべき課題がある。助けるべき人を見逃さず、はやく救うための仕組みをつくることだ。

 通報を受けたときや、救急隊が現場に着いたときに緊急度を判断する基準は、自治体によってまちまちだ。明確な基準のない自治体もある。

 総務省消防庁が、全国標準の判定システムを作るという。先行する自治体の取り組みを見ると、効果は期待できそうだ。

 たとえば横浜市消防局は4年前から、119番を受ける職員のパソコン画面に80項目のチェックリストを載せている。聞くべき項目が網羅され、危険な兆しをとらえやすい。緊急度が高いと判断すれば、派遣人員も手厚くする。

 導入前に比べ、通報者の症状が重い時ほど速く現場に着くようになったという。こうした試みを参考に、国としても精度の高い仕組みを作ってほしい。

 一方で、全国の消防は「増え続ける救急出動をいかにさばくか」という課題を抱えている。

 この10年で全国の救急出動の件数は24%増えた。一方、救急隊の数は8%増にとどまり、需要増に追いつかない。しかも搬送した人の半分は結果的に軽症だった。「必要な人に、はやく確実に」は簡単ではない。

 それでも、症状が軽そうだからと、通報段階でふるい落とす方法はとるべきではない。

 近年増えているのは高齢者の通報だ。横浜の統計では、高齢者は実際に症状が重かった人の率が他の世代より高い。高齢化という社会構造の問題は、ふるい落としでは解決しない。

 消防庁も「要請があれば原則出動」の方針を変えていない。

 数年前には、救急車をタクシー代わりに呼ぶような通報の多さが問題になった。一部自治体は、消防のサイトに家庭で症状を診断できるリストを載せたり、119番の前に電話相談できる窓口を設けたりしている。

 不要不急の通報減らしは、こうした地道な試みを広げることで図るしかない。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報