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天声人語

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2012年10月12日(金)付

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 くたびれる夜勤で、ストレスのはけ口にされては駅員もたまらない。昨年度、鉄道職員への暴力行為が過去最多となった。危ないのは酔客が交じる夜である。統計に表れない客同士のトラブルは、その何倍もあろう▼しかも、車内の怒鳴り合い、つかみ合いの沸点が下がっているようだ。肩が触れ合う空間には、かんしゃく持ち、気配り下手、仕事でしくじった人もいる。許容の物差しは各様で、ささいな言動があらぬ化学反応を起こす▼思えば、都会そのものが巨大な満員電車のようなもの。軒を接し、壁を隔てて多数が暮らせば、気に障ることもあろう。物音、臭い、習慣、立ち居振る舞い。大概は互いの気遣いで収まるが、ひとたび顔を見るのも嫌になると、火薬はたまるばかりだ▼東京の世田谷区で、元警察官の男(86)が向かいに住む女性(62)を日本刀で殺害し、自ら命を絶った。二つの家に挟まれた細い路地では、植木の世話やゴミ、猫の餌やりを巡ってもめ事が絶えず、警察が駆けつける騒ぎもあったという▼都市生活には近隣トラブルがつきものだ。東京、大阪といった「揺れのひどい大型車両」には、爆発寸前の関係も潜む。近所が間に入るなりして、火薬を抜くしかない▼「仲よき事は美(うつ)くしき哉(かな)」「君は君 我は我也(なり) されど仲よき」。ごろりとした野菜に添えた武者小路実篤(むしゃこうじ・さねあつ)の画賛を読み返す。人は感情に動かされるが、それを制する理性も併せ持つ。実篤が好んだ南瓜(かぼちゃ)でも食し、心の火種を自ら除いておきたい。

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