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フィリピン南部のミンダナオ島で、和平実現への希望の明かりがともった。島では反政府イスラム武装勢力と政府との紛争が40年以上続く。犠牲者10万人以上という。独立を求めるモ[記事全文]
来年度予算の編成で、農林水産業が環境、健康とともに重点分野の一つに位置づけられた。国産品の価格競争力を高めて自給率を引き上げ、政府が掲げる「農林水産品の輸出倍増・年間1[記事全文]
フィリピン南部のミンダナオ島で、和平実現への希望の明かりがともった。
島では反政府イスラム武装勢力と政府との紛争が40年以上続く。犠牲者10万人以上という。独立を求めるモロ・イスラム解放戦線(MILF)とアキノ政権が交渉し、和平の枠組みに関する合意にこぎつけた。
東南アジアの近隣国で悲惨な紛争が続いている。日本は目をそらしてはなるまい。今こそ交渉の最終合意へ向けて、ひと汗もふた汗もかくべきだ。
マレーシアや英国、国際NGOとともに日本は、紛争解決へさまざまな支援をしてきた。
昨年8月には、極秘に来日したアキノ大統領とMILFのムラド議長とを、成田空港近くのホテルで初めて引きあわせた。
その後、本格化した交渉の結果、フィリピン政府は新たな自治政府の樹立を認め、MILFは独立要求を取り下げた。
初のトップ会談が生きたとすれば、日本の仲介外交が貢献できたと言えるだろう。
ミンダナオの現地でも日本人が平和を築こうとしている。
国際協力機構(JICA)は6年前から、イスラム諸国が中心となって作る国際監視団に専門家を送り、住民の教育や医療改善に取り組んでいる。いま駐在する落合直之さんは「住民の喜ぶ姿を見ると私もうれしい。地域の経済開発だけでなく、新しい自治政府の制度作りや人材育成に努めたい」と語る。
和平の枠組み合意ができた背景には、地域でのイスラム過激派組織の退潮が響いているようだ。ミンダナオを訓練地の一つとしてきた隣国インドネシアの過激派の勢いは衰えた。反政府側の武器や資金の入手先と疑われていたリビアのカダフィ政権も昨年崩壊した。その影響があるのかもしれない。
とはいえ、交渉の先行きは予断を許さない。
政府とMILFはこれから、自治政府に帰属する土地の範囲や天然資源の配分、武装解除の手続きといった具体的な話に入っていく。どれも現地を巻き込んだ政治的な闘争や、経済の利権争い、住民の反発を招きかねない難題ばかりだ。
しかしそこにこそ、第三の中立的な仲介者が役割を発揮できる余地がある。
ミンダナオには第2次大戦前から日本人移住者が多く住み、今はバナナ農園や鉱山開発の日系企業が活動している。
日本はカンボジアやパレスチナで平和構築の取り組みを重ねてきた。そこで得た貴重な経験をミンダナオで役立てよう。
来年度予算の編成で、農林水産業が環境、健康とともに重点分野の一つに位置づけられた。
国産品の価格競争力を高めて自給率を引き上げ、政府が掲げる「農林水産品の輸出倍増・年間1兆円」計画を絵に描いたモチに終わらせないために、発想の転換が必要だ。
代表例が、日本人の主食であり、おいしさでは「世界一」と自負するコメだろう。
国内では生産調整(減反)を続け、輸入米に高い関税をかけて、手厚く保護してきた。
ところが、家庭の購入額で昨年、初めてパンに抜かれた。1人あたりの消費量は、ピークだった60年代から半減した。食生活の変化は大きいが、それだけではあるまい。
スーパーの西友が売り出した中国産のコメが人気を集めた。輸入米の入札に外食産業が殺到する。ともに、高関税の代償として関税ゼロで輸入しているミニマムアクセス米の一部だ。やはり「安さ」は強い。
一方、コメの輸出額は年7億円弱で農林水産物全体の0.2%弱にすぎない。価格の高さが伸び悩みの主因だろう。
減反と高関税が価格を下支えし、それが需要を抑える。売れないので減反で対応する。この悪循環から抜け出すには、激変を和らげる対策をとりながら、「減反・高関税」政策を改めていくことが必要だ。
国内の水田のうち約3分の1では主食用のコメではなく、麦や大豆、加工用米などを作っている。麦などの輸入を減らして自給率を高める狙いだが、投じる費用に見合った効果があるのか、疑問は根強い。
減反を緩和し、意欲的なコメ農家の生産増を促して価格を下げる。それでコメの国内消費と輸出の両方を伸ばし、少々の不作にも耐える生産基盤を作る。そんな考え方ができないか。
カギは「関税による消費者負担から、財政による納税者負担へ」をうたう戸別所得補償である。価格を抑えつつ、採算割れとなる作物では現金の直接支払いで農家を支える仕組みだ。制度は3年目に入った。
ただ、減反への参加が支払いの条件のため、減反の維持につながっている。農家の経営規模にかかわらず、コメを生産・販売する全農家が対象とされたため、農地を他に貸していた農家も「貸しはがし」して生産に戻るなど、コスト削減に不可欠な規模拡大も妨げている。
これではバラマキというしかない。まず戸別補償の見直しに取り組まないと、予算増額への理解は得られない。