国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会など一連の国際金融会議が東京で始まった。世界経済安定に向けた協調が主題で、主催国の日本は震災復興など復元力の強さもアピールしたい。
加盟百八十八カ国から金融・財政政策のトップら官民約二万人が訪れる一大イベントである。日本での開催は東京オリンピックの一九六四年以来、四十八年ぶりとなる。ほぼ半世紀を隔てて、高度成長の黎明(れいめい)期から「ゼロ成長」が続く長期停滞経済へ様変わりした。
国内総生産(GDP、名目)が九〇年代の水準を下回っている国は他にない。高齢化や巨額財政赤字に直面して「沈滞した国」というのが外国人が抱く最近の日本評である。確かに統計上の停滞感はその通りだし、政治や外交の行き詰まりは誰の目にも明らかだ。被災地の復興にも遅れが目立つ。
とはいえ、曲がりなりにも千年に一度の震災を克服し、長引く超円高という逆風下でも日本経済は立ち直った。欧州の危機が「世界経済の脅威」と非難されながら四年以上も続いてきたり、米国発のリーマン・ショックのように世界を道連れにしたのとは対照的である。外国人は東京の高層ビル建設ラッシュに目を見張るはずだ。
もともと今回の会議はエジプトで予定されていたが、ムバラク政権崩壊に伴う政情不安で日本が代わりに開催することになった。経済力だけでは推し量れない経験知や秩序、おもてなしといったソフト面の力量があってこそだ。天災は多くてもすぐに復元する国、危機対応力が高い日本を、あらためて世界に示す好機である。
IMFが東京で九日発表した世界経済見通しは、二〇一二年の成長率を3・3%と七月時点よりも下方修正し、減速感を強調した。これを受け、一連の会議では、欧州危機や米国の財政問題、新興国経済の減速など先行き不透明感が強まる世界経済が議論の焦点となる。ここでも日本は、官民合わせて二百に上る会合の場で、失敗も含め自らが学んできた経験や知見を、じっくりと世界に説明し、成果を還元すべきだろう。
さらにIMFも懸念を示す日中の対立問題への対応である。世界第二、第三の経済大国同士の断絶は世界経済に悪影響を及ぼしかねないが、政治では完全に袋小路に陥っている。かつての「政冷経熱」の経験も生かし、経済のチャンネルで打開できないか、その絶好の機会でもあるはずだ。
この記事を印刷する