医療費や介護費の増大など、少子高齢社会の問題がとかく口端に上る。でも、お年寄りはいよいよ元気なのだ。きょうは「体育の日」。若い世代はもっと見習いたい。健康と体力へのその情熱を。
この夏、ロンドン五輪で日本中が沸いた。獲得したメダルは過去最多の三十八個に上った。
レスリング女子の吉田沙保里選手は三大会連続して金メダルを取り、世界選手権で十連覇を果たして国民栄誉賞が話題に。その偉業に敬意を表したい。
そんなトップアスリートが生まれるのも、スポーツがみんなの身近な存在であればこそだ。世代を問わず、日ごろから運動に親しみ、楽しめる環境が欠かせない。
最初の一歩として基礎的な体力づくりに励み、心身を健やかに保つ努力が肝心だ。この点では、最近の高齢者の運動への意欲と情熱に目を見張らされる。
文部科学省が公表した二〇一一年度の体力・運動能力調査の結果を見ると、とりわけ六十五〜七十九歳の増進は目覚ましい。
この年代の調査がスタートした十四年前から追跡すると、右肩上がりの傾向が一目瞭然だ。
例えば、目を開けて片足で立っていられる時間は六十代後半の男性で一二・五一秒、女性で一八・五五秒伸びた。六分間に歩ける距離は七十代後半の男性で三四・四七メートル、女性で三二・三四メートル増えた。六項目あるテストのほぼすべてで好成績を収めた。
背景には、ふだんから運動を心がける人が増えているという実態がある。時間とお金の余裕に背中を押されてか、六十歳以上の二人に一人は週に最低一度は汗を流す。ゲートボールやウオーキング、水泳、登山とその裾野は広い。
スポーツは体を鍛えるだけではない。生きる目標を与え、人と人のつながりを育み、孤立化を防ぐ。そんな効用が指摘される。
体力と気力がみなぎれば、再びやりがいを求めて仕事に向かう。高齢者の就業人口は緩やかに上昇中という。財務省や厚生労働省が気をもむ医療や介護にかかる費用を抑えるのに貢献しよう。
子どもの成績も上向きつつあるが、気になるのは働き盛りの世代だ。筋力や柔軟性などおしなべて芳しくない。仕事や育児に追われ、運動の機会が確保しにくいのかもしれない。食事や睡眠などの生活習慣の乱れも案じられる。
早歩きをする。階段を上る。脚を閉じて座る。今から老後を見据え、体を動かす工夫をしたい。
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