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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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アラン・ドロンの出世作「太陽がいっぱい」は、裕福な友になりすまして財産を狙う話だった。別人を装う点は振り込め詐欺も同じだ。こうした「世俗の悪事」に比べ、ネット空間の闇は底が知れない▼「歩行者天国にトラックで突っ込む」「伊勢神宮を爆破」。この手の書き込みは、業務を妨害した罪に問われる。警察は発信元のパソコンを割り出し、大阪と三重の男性をそれぞれ逮捕した▼ところが、2人のパソコンは同じウイルスに感染していて、何者かに遠隔操作で乗っ取られた疑いが濃くなる。真犯人は持ち主になりすまし、犯罪予告に及んだらしい。否認で通した2人は慌ただしく釈放された▼個人情報の流出ばかりか、愛機を不正アクセスやサイバー攻撃の踏み台にされ、濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着るなど御免だ。大阪の件は起訴され、裁判になるところだった。捜査側がよほど心しないと、不運な被害者は冤罪(えんざい)の責め苦まで負うことになる▼ネット上には日々20万種ものウイルスが放たれ、対策が追いつかないそうだ。生活感の乏しい部屋で、陰々と悪意を「培養」している輩(やから)に言いたい。人生は短い。他を陥れる暇と知恵があるなら、「自分の今」を楽しまないか▼ツイッターでは、時の人、山中伸弥教授の名をかたる者が「ノーベル賞キター」などとやっている。これはご愛敬としても、ネットに巣くう悪はドライなようで、じめっと嫌らしい。ホラー映画で人に取りつく悪霊やエイリアンのごとく、迷いなき狡知(こうち)にあふれている。