HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 39932 Content-Type: text/html ETag: "10900f3-2413-30bdbe80" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sun, 07 Oct 2012 20:21:06 GMT Date: Sun, 07 Oct 2012 20:21:05 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年10月8日(月)付

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 東京の銀座裏で小料理屋を切り盛りした俳人、故鈴木真砂女(まさじょ)さんは魚どころの千葉県鴨川に生まれた。卒寿を過ぎても魚河岸へ通い、厨房(ちゅうぼう)に立った女将(おかみ)ならではの一句がある。〈悪相の魚は美味(うま)し雪催(ゆきもよい)〉。魚を詠みつつ、どこか人間観察のような趣も秘めて奥が深い▼美味で知られる悪相にはアンコウなどがある。とはいえ多くは、味わう前に見た目の悪さで嫌われる。そうした、いわゆる「外道」を料理屋へ卸す珍魚ビジネスが上げ潮だと、大阪本社版の記事が伝えていた▼ごつくて斑紋のあるミシマオコゼ、エイの仲間のウチワザメ、怪しげなヌタウナギなど、姿を見れば口にするのに勇気が要りそうだ。しかし食味はなかなかという。それに切り身にでもすれば、もとの風体は分からない▼悪相でなくても、まとまった量が獲(と)れない、なじみがない、などと捨てられる魚は少なくない。正確な統計はないというが、国内で年間に約62万トンが投棄されているとの推計もある。これでは魚も浮かばれない▼魚食の民・日本人の食卓も近ごろはいびつだ。回転ずしでは皿を積み上げながら、家庭では魚離れが進む。まな板がくさくなる、いやなにおいが部屋にこもる……。魚にさわれぬ若い人も多いと聞く▼真砂女さんには〈鰯(いわし)裂(さ)くに指先二本安房(あわ)育ち〉の句もある。包丁がなくても親指の爪と人さし指でさばくそうだ。殺生の手ざわりに、滋味をいただく感謝も深まろう。悪相もイケメンも魚一匹に命ひとつ。粗末にしては申し訳ない。

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