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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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自転車をこぐのは、20歳くらいのお嬢さんだった。コンビニのおにぎりを左手でほおばる合間に、右手がスマホをいじっている。四肢と五感を総動員した「曲乗り」である。歩行者をはねる勢いはないけれど、ふらつく本人が誰より危ない▼マイカーがなく、街歩きが趣味の当方、自転車はいつも強者と映る。歩道で身の危険を感じるのは、高速でのすり抜けだ。こちらは若い男性が多い。運動神経に感心する前に、常識を疑ってしまう▼運転免許こそ要らないが、自転車は道路交通法にしばられる。昨年摘発された信号無視などの違反は4千件に迫り、5年前の約7倍、今年はさらに4割増しのペースという。警察庁は、悪質な違反者への安全講習を検討し始めた▼マナーやルールの徹底とは別に、人を自転車から守り、自転車を車から保護する早道は、専用道や優先レーンだろう。街を安全にする公共事業は歓迎だ。「自転車天国」のオランダで車を走らせた経験からすると、交通の分離でドライバーも楽になる▼駐輪場や都市型レンタサイクルは増えたが、走る環境が整わないと勇んで乗る気にならない。エコと健康に資する利器をのけものにしないよう、皆で知恵を絞りたい。この乗り物、悪役は似合わない▼〈あまりにも落葉の美しき歩道にて路肩を選(え)りて自転車を漕(こ)ぐ〉後藤正樹。まずまずの日和(ひより)に恵まれそうなこの連休、ペダルを踏み込み、しばし秋風と遊ぶのもいい。きらめく季節を頬(ほお)に、はずむ命を靴底に感じながら。