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政治は、野田政権の延命や、民主党の離党者防止のためにあるのではない。自民党の新総裁が決まってから1週間あまり。公明党をまじえた3党の党首会談がなかなか開かれない。[記事全文]
東日本大震災の復興予算に、被災地とは直接関係のない事業が数多く含まれている。批判の高まりに、政府は関連予算を調べる姿勢を示し始めたが、役所任せにはできない。[記事全文]
政治は、野田政権の延命や、民主党の離党者防止のためにあるのではない。
自民党の新総裁が決まってから1週間あまり。公明党をまじえた3党の党首会談がなかなか開かれない。
野田首相をはじめ、民主党の逃げ腰のせいだ。
党首会談を開けば、自公両党から「近いうち」の衆院解散の約束を果たすよう迫られる。その結果、次の臨時国会での解散が現実味を帯びれば、さらなる離党者が出かねない。
折しも、田中慶秋法相に外国人からの違法献金問題が発覚した。自民党は臨時国会で厳しく追及する構えだ。
「そんな臨時国会なら開く必要はない」。民主党にはそんな声すらある。
だが、それは通らない。
先の国会で赤字国債発行法案が廃案になった結果、9月から5兆円の予算の執行が抑制されている。地方交付税の支給延期などの異常事態は、すみやかに正す必要がある。
そのために、首相が選ぶべき道はひとつしかない。
ただちに党首会談を呼びかけ、譲るべきは譲って3党の協力態勢を改めて確認する。そして早期の臨時国会で懸案を片付けることだ。
動かない首相に、自公両党は不信を募らせている。解散を恐れ、逃げ回るばかりなら、「決められない政治」に逆戻りすることは目に見えている。
やるべきことは山積みだ。
最高裁に違憲状態と断じられた衆院の「一票の格差」を是正する。そのために「0増5減」の自民党案を成立させる。
3党で合意した社会保障をめぐる国民会議を設置する。
原子力規制委員の人事を国会で承認する。
とりわけ重要なのは、衆参で多数派が異なっても合意形成ができる国会のルールづくりだ。
赤字国債発行法案は、予算と一体で成立させる。国会同意人事は衆院の議決を優先する。
次の総選挙の前に、与野党がこうしたルールをしっかり確認しておくことは、政治を前に進めるために欠かせない。
政権交代をへて、多くの議員が与党を経験し、国会運営の厳しさを学んだ。新たなルールづくりの重要性は与野党とも共有できるはずだ。
首相に問いたい。
野党と正面から向き合い、一体改革をまとめたときの熱意と粘りはどこへ消えたのか。
ヤドカリが貝殻に隠れるように、身をすくませるだけでは政権党の名が泣く。
東日本大震災の復興予算に、被災地とは直接関係のない事業が数多く含まれている。
批判の高まりに、政府は関連予算を調べる姿勢を示し始めたが、役所任せにはできない。
自民党は、国会が閉会中でも衆議院の決算行政監視委員会を開いて審議する構えだ。民主党はこれに応じ、国会主導で検証すべきである。
復興予算は昨年度の第3次補正予算で本格化し、今年度から復興特別会計で管理している。
被災地でのがれき処理や原発事故に伴う除染、壊れた社会基盤や産業の復旧・復興が中心だが、問題はその「周辺」だ。
大きく分けて二つある。
まず、復興との関係がこじつけとしか思えない事業だ。
たとえば、農林水産省は反捕鯨団体「シー・シェパード」への対策費(5億円)を支出した。調査捕鯨が妨げられると鯨肉が手に入らず、被災した宮城県石巻市周辺の缶詰工場などの再興が滞る、との理屈だ。国内に大量にある鯨肉の在庫をいかせないのだろうか。
首をかしげたくなる予算は、他の省庁にも少なくない。
もう一つは、全国を対象とした事業である。具体的には、防災対策費と、産業の空洞化を防ぐための立地補助金だ。
政府は昨夏に決めた復興基本方針で「大震災を教訓に全国的に必要性が高い防災・減災の施策を行う」「日本経済の再生なくして被災地域の復興はない」として、これらの補助金を認めている。
学校や役所の耐震化、道路補強などの全国防災事業は今年度当初予算分を含めて1兆円を超え、企業への立地補助金は約3千億円にのぼる。
防災対策は大切だ。円高などに直面する企業への支援も必要だろう。
だが、その一方で、被災地での予算執行が目詰まりを起こしている例がみられる。被災地で必要な資金が不足し、他の地域の事業が着々と進むのでは本末転倒だ。
被災地からみて条件が厳しすぎたり、手続きが複雑だったりしないか。資金が不足する分野に予算を優先的に回す工夫を含め、改善を急ぐ必要がある。
復興予算は、最終的には所得・住民税などの復興増税を中心にまかなう。赤字国債の発行を伴わず、毎年度の一般会計予算とは違って、厳しい上限は設けられていない。このことが放漫な予算計上につながった。
復興予算の検証作業を通じ、予算編成のあり方そのものも見直していかねばならない。