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野田政権は本気で脱原発を進める気があるのだろうか。原子力規制委員会が、停止している全国の原発について再稼働の判断にはかかわらない、との見解をまとめた。[記事全文]
食品表示のあり方を見なおすための法案づくりに、消費者庁が取り組んでいる。いまは食品衛生法、健康増進法、JAS法など、つくられた経緯も目的も異なる法律がそれぞれルールを定[記事全文]
野田政権は本気で脱原発を進める気があるのだろうか。
原子力規制委員会が、停止している全国の原発について再稼働の判断にはかかわらない、との見解をまとめた。
委員の一人は、規制委が個々の原発を安全だと判断することは、再稼働を認める場合の「必要条件」だが、「十分条件になるかは別問題」と指摘した。
もっともだ。規制委が合格点を与えても、ほかの電源でまかなえるなどの条件が整えば、再稼働する必要はない。その判断は、政治の仕事である。
ところが政府は「規制委が安全と判断した原発は重要電源として活用する」「政治が介入すれば規制委の独立性を損なう」と繰り返している。
大飯原発(福井県)の再稼働で国民の不信をかったことに懲りたからだろうか、野田政権は再稼働問題を規制委にすっかり丸投げしている。
おかしいではないか。
規制委の独立性を守るのは当然だ。しかし、それは安全性の判断について、である。
野田政権は「2030年代に原発稼働をゼロとする」目標を掲げた当事者だ。
不要な原発はできるだけ早く閉めていく。この大きな政策転換の枠組みの中に、再稼働問題も位置づけられる。
電力需給の面では、原発をほとんど動かさなくても問題のないことが明らかになっている。
では、最小限動かさざるをえない原発の条件とは何なのか。政府として原発を「当面の重要電源」とするなら、そこを明確にし、再稼働の新たな基準を設けるべきだ。
有権者が知りたいのは、脱原発依存をどうやって進めるかという点である。国民の信頼をつなぎとめたいなら、ゼロ目標に向けた現実的な行程表づくりを急がなければならない。
再稼働についても、現時点での電力融通の限界や電気料金への影響、地元自治体の財政や雇用問題など論点を整理し、具体的な対策と克服に必要な時間を示す必要がある。
今冬の対策も大事だ。冬の電力需要は暖房の割合が大きい。ピーク時の抑制が必要な夏と違って、いかに総量を抑えるかが重要になる。東北や北海道での対策が焦点となるが、同じ周波数の地域が広い西日本ほど電力の融通がきかない面もある。
準備を怠ってはいけない。
野田首相は、大飯原発の再稼働で「私の責任」を強調した。野田さん、内閣が掲げた原発ゼロ目標への責任こそ、果たすべきでしょう。
食品表示のあり方を見なおすための法案づくりに、消費者庁が取り組んでいる。
いまは食品衛生法、健康増進法、JAS法など、つくられた経緯も目的も異なる法律がそれぞれルールを定めていて、混乱や用語の不統一が目につく。
これを整理し、あわせて、たんぱく質、脂質、ナトリウムといった栄養成分の表示を原則として義務づけることが、法案に盛りこまれるという。
食品の内容に関する情報は膨大・多様で、表示できる範囲には限りがある。そこで、安全性にかかわるものを最優先し、そのうえで、商品を選ぶときに役立つ他の情報も記載させる。新法がとろうとしているこの考え自体は妥当といえよう。
次の通常国会をめざした作業は、有識者の検討会が今年8月にまとめた報告書にもとづいて進められる。検討会では、消費者側と事業者側との意見の対立などから、先送りされたり玉虫色の表現になったりした論点が少なくない。
たとえば報告書は、文字を大きくして見やすくする必要性を強調するかたわら、いま表示が義務づけられている事項について、「この機会に検証を行うべきだ」としている。
意図するところは何か。消費者団体などは「情報減らしにつながるのではないか」と警戒するが、これを思いすごしだと片づけるわけにはいかない。
そもそも日本の食品表示は、欧州連合(EU)などに比べて立ち遅れているといわれる。
国際的には、水分をふくめ、主な原材料の分量をパーセント表示する▽栄養成分は絶対値だけでなく、1日に必要な量に占める割合をあわせて示す▽食品添加物については「調味料」といった簡略表示を認めず、物質名と用途を明記する――といった措置をとる例が多い。
すべて同調するかどうかはともかく、こうした世界の動向を視野に入れねばならない。
食べものは人の健康や生活の質に直結する。企業が手間やコストの増加を心配するのはわかるが、消費者の求めにこたえてこその商品ではないか。
発足から日が浅く、各界との調整に苦労する消費者庁だが、その名のとおり、消費者本位の姿勢でのぞんでもらいたい。
法律ができれば終わりという話ではない。表示内容や体裁など細部の多くは、内閣府令にゆだねられる。国会審議がなく、市民の目が届きにくい世界だ。
消費者の利益に反する判断がなされないよう、一人ひとりが関心を持ち続けたい。