HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52326 Content-Type: text/html ETag: "a3f85-1831-4caed97bf5a44" Expires: Tue, 02 Oct 2012 02:21:07 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 02 Oct 2012 02:21:07 GMT Connection: close 原発被害賠償 和解による早期救済が大切だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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原発被害賠償 和解による早期救済が大切だ(10月1日付・読売社説)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の被害者が、適切かつ迅速に救済されるよう、紛争処理の体制をさらに充実させていくことが大切だ。

 今回の原発事故を巡っては、9月下旬までに94万件の賠償申請が東電にあり、そのうち86万件で合意に達した。賠償総額は1兆2400億円に上り、今後も増え続ける。約16万人を避難に追いやった事故の深刻さを物語っている。

 賠償金は、政府が立て替え払いしたうえで、東電に請求する仕組みだ。政府の原子力損害賠償紛争審査会が定めた指針が、算定の基準となる。避難に要した交通費などの実費、仕事を失った農家や事業者の損失などが対象だ。

 こうした初期の賠償交渉での合意率は高いが、被災者が納得しないケースも少なくない。

 東電との交渉がうまく運ばない場合に、仲裁を託されるのが、審査会の下部組織である「原子力損害賠償紛争解決センター」だ。弁護士や調査官約150人で構成されている。

 昨年9月に始動し、この1年で560件の和解を成立させた。中でも自主避難区域にとどまった住民への慰謝料を増額したことは、一つの成果と言えよう。

 自主避難区域の場合、避難した人には、帰宅困難区域の人と同額の慰謝料(月10万円)が支払われるが、残留者には半額程度というのが当初の賠償方針だった。

 仕事の都合で自宅を離れられず、やむなく家族だけを避難させるなど、被害者は様々な不便や苦痛を強いられている。センターは、そうした実態を調査し、和解案に反映させた。

 被害者の実情に応じた救済を進めていくことが必要だ。

 賠償作業は今後、正念場を迎える。避難者が地元に残した土地・建物、農家や企業の使えなくなった事業用敷地など不動産の賠償交渉が本格化するからだ。

 賠償の算定には、事故発生時点の固定資産税評価額が適用される。だが、地価の高い時期にローンを組んだ人もいる。古い木造家屋などは評価額自体が低い。

 算定額を拒否する住民が続出することが懸念される。センターの役割はさらに重要になる。決着までに時間がかかる民事訴訟ではなく、訴訟以前に和解を成立させ、被害者の早期救済を図りたい。

 東電は、指針を機械的に運用すべきではない。柔軟な姿勢が求められる。事故を起こした企業として、被害者救済をいたずらに遅らせることは許されない。

2012年10月1日01時14分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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