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野田首相がきのう、内閣改造に踏み切った。政権発足からほぼ1年で、3度目の改造である。猫の目のようにクルクルと閣僚が代わるめまぐるしさは、政権弱体化の表れにほかならない。[記事全文]
米軍の新型輸送機オスプレイの第1陣が沖縄県の普天間飛行場に着陸し、本格運用に向けた準備が始まった。野田首相は、「安全性は十分確認できた」との談話を出したが、沖縄県民は不[記事全文]
野田首相がきのう、内閣改造に踏み切った。
政権発足からほぼ1年で、3度目の改造である。猫の目のようにクルクルと閣僚が代わるめまぐるしさは、政権弱体化の表れにほかならない。
事実、前回、前々回は、閣僚の問責決議で追い詰められた末の改造だった。今回は、野田首相が民主党代表選で再選されたのを受けた態勢づくりだ。
首相は改造のねらいについて「政府・与党が一体となり、チーム力を最大限発揮していく」ためだと説明した。
では、首相はそのチーム力を使って何をしたいのか。新閣僚の顔ぶれを見ても、それがちっとも見えてこない。
全体の半数を超える10人の閣僚を代えた。社会保障と税の一体改革や外交など喫緊の案件を抱えた閣僚と、6月改造で代わったばかりの人を除けば「総取りかえ」だ。
8人の初入閣組には、国民の生活が第一の小沢一郎代表に近かった議員もいれば、党役員人事で外れた人もいる。
民主党では離党者が後を絶たず、もう少しで衆院で単独過半数を割り込む。そうなれば内閣不信任決議案の可決も、現実味を帯びてくる。そんな事態を避けるため、多くの議員にポストを割り振ろうとしたのかもしれない。
だが、それで党がまとまるか大いに疑問だ。なにより、これまで所管分野と縁が薄かった「素人閣僚」が目につき、適材適所とはいいがたい。
サプライズは田中真紀子文部科学相だ。遠からずある総選挙に向けて「選挙の顔」を期待しての起用なのだろう。
ただ、小泉内閣の外相当時、外務官僚と対立の末に更迭された経緯を忘れるわけにはいかない。今度こそ、教育行政など職務に集中してほしい。
民主党政権の一枚看板は「政治主導」だったはずだ。ところが、この3年で首相は3人、改造は計5回にのぼる。衆参がねじれ、難しい政権運営を強いられているという事情があるにせよ、これでは閣僚は落ち着いて仕事ができない。
そもそも政治主導以前に、任に堪えない人材も多すぎた。
それでも、赤字国債発行法案の処理や、最高裁から違憲状態と指摘されている衆院の「一票の格差」の是正など懸案が待ち構えている。改造内閣は、まずは全力でそれらに取り組まねばならない。
やはり粗製乱造だったかとあざけりを受けぬよう、閣僚は気を引き締めてほしい。
米軍の新型輸送機オスプレイの第1陣が沖縄県の普天間飛行場に着陸し、本格運用に向けた準備が始まった。
野田首相は、「安全性は十分確認できた」との談話を出したが、沖縄県民は不安と反発を強めている。
政府と地元との認識の差はあまりに大きい。これを侮ることは、県民生活や日米同盟の将来を考えても、危険である。
普天間飛行場の主な三つのゲートでは、先週から市民団体の抗議行動が続いている。基地機能をまひさせようと、住民たちは車をバリケード代わりにゲートを封鎖し、県警が強制排除する事態になっている。
ゲート前の抗議集会に連日、翁長雄志(おながたけし)那覇市長ら市町村長たちが、党派を超えて駆けつけている。きのうは仲井真弘多(なかいまひろかず)知事も飛行場わきの宜野湾市役所の屋上から、オスプレイの飛来を見守った。
「県民の不安が払拭(ふっしょく)されないまま強行する手法は、どう考えてもおかしい。自分の頭に落ちてくる可能性があるものを、だれがわかりましたと言えますか」と知事は憤る。
政府はオスプレイの運用にあたり、可能な限り人口密集地の上を飛ばないようにすることなどで米側と合意した。
だが、沖縄県民はこれまでの米軍の飛行や事故の経験から、それは守られない約束であることを痛いほど知っている。
沖縄県民が怒るのは、新型機の安全性の問題だけからではない。米軍基地を沖縄に押し込める構造。それがいつまでたっても改まらない。これらを差別的だと感じていた不満が、一気に噴き出したのだ。
だからこそ、先月の県民大会には、お年寄りから子供まで、組織されない人たちもふくめて数万人もが集まった。参加者の広がりや、抗議にこめられた思いの強さは、これまでとは明らかに質が異なる。
野田首相はきのうの記者会見で、「普天間飛行場の一日も早い移設・返還をはじめ、沖縄の負担軽減や振興にいっそう力を入れていく」と述べた。
首相がこれらを実行するのは当然だが、名護市辺野古への移設を進めようというのなら、見当違いだ。
政府内には、いずれ仲井真知事が辺野古移設を決断してくれるとの期待がある。だが、それは甘いというほかない。
いまや辺野古があり得ないことは、県民の総意に近い。そこを見誤っては普天間返還は遠のくばかりだ。首相は沖縄の現実を直視しなければならない。