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天声人語

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2012年10月1日(月)付

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 この駅に向かう列車はすべて上りとなる。「都(みやこ)でひと旗」の時代には、若い野心が全国から降り立ち、入れ違いに失意の背が車中に消えていった。百様の人生が、始発終着のそれぞれに揺れる▼汽笛一声新橋を……。明治期の鉄道唱歌がそう始まる通り、東海道線の起点は新橋、同じく東北線は上野だった。かたや、新宿から西へと進み続ける中央線は東にも延びていた。三線を束ねるべく、皇居わきの原っぱに東京駅ができたのは1914(大正3)年12月である▼丸の内の駅舎は赤れんがの3階建てで、「帝都の表玄関」を意識し、南北に300メートルを超す威容となった。戦災で失われた二つのドーム屋根や3階部分が、5年をかけて創建時の姿に復元され、きょう全面開業する▼屋根材には、大津波をくぐった宮城県産の天然スレートが使われた。美しさでも世界屈指の鉄道駅だろう。高層化しないことで生じる「空中権」を周りの新築ビルに譲り、約500億円の工費を賄ったと聞く。賢い投資である▼〈ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく〉。岩手出身の啄木の感傷は、往時の上野駅以外では成立しない。同様に、赤れんがの東京駅と切り離せない喜びや哀(かな)しみ、出会いと別れがある。積もった時だけが醸す存在感に、代役は見当たらない▼建造物の復元は、そこにまつわる無数の、そして無名の記憶を守ることでもある。人は記憶の辺(ほとり)にたたずんで、熱いまま捨てた思いや、砕けた夢のかけらを拾う。

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