HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 28 Sep 2012 03:22:29 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: <寒いときお前鰹(かつお)が着られるか>とは、古川柳。寒…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 <寒いときお前鰹(かつお)が着られるか>とは、古川柳。寒の戻りが心配な時季に、冬物を一切がっさい質屋に入れてまで、値が張る初鰹を食べるのが江戸っ子▼<うまいまずいじゃない。鰹は、秋の戻りが一番脂がのってうまいのだが、戻りを「猫またぎ」と称し、猫もまたいで通りすぎるといった>と、杉浦日向子さんが『大江戸美味草紙』(新潮社)に書いている▼この季節の鰹は、とろけるようにうまい。脂がのって艶(つや)やかに光る戻り鰹の刺し身を食べ始めると、わが家の猫は食卓の横から動かなくなる。視線は、猫またぎにくぎ付けだ▼その季節の美味を楽しめるのも、荒海に乗り出して、新鮮な魚を一刻も早く港に届けようという漁師たちの心意気があってこそだ。宮城県・金華山沖で鰹一本釣り漁船「堀栄丸」が遭難し、けさで五日目。現場海域に台風が近づいたため、仲間の漁船による捜索は打ち切られた▼不明乗組員の中には、十九歳の双子の兄弟、堀口凌さん、祥さんもいる。船酔いに苦しみながらも、祖父の船で海の男としての一歩を踏み出したばかりだ。「漁に出て、日に日にたくましくなった」という知人の言葉に、二人の成長ぶりを思う▼♪波の谷間に命の花が ふたつ並んで咲いている…。『兄弟船』(星野哲郎作詞、船村徹作曲)の歌詞を思い浮かべつつ、漁師たちの無事を、ただただ祈るしかない。

 

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