世界経済が減速している。欧州、米国、日本は今月そろって金融緩和に踏み切った。中国など新興国も失速している。各国とも中央銀行頼みを脱却し、政策総動員で景気回復を急ぐべきだ。
来月、東京で世界中の金融・財政当局者が一堂に会する場は、全世界に立ち込める景気減速の重苦しさを確認することになりそうだ。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が二十四日、ほぼ半世紀ぶりに東京で開かれるIMF・世界銀行年次総会に関し「世界の成長率予想を下方修正する」との見通しを明らかにしたからだ。
リーマン・ショックと、それに続く欧州の金融・財政危機が起きて、すでに四年がたった。世界恐慌の淵(ふち)からは逃れたが、その後、成長は鈍いままだ。世界経済の足を引っ張ってきたのは、言うまでもなく欧州危機である。
また、欧州や米国の“過度の財政引き締め”も成長を妨げるブレーキだ、とIMFは警戒する。米国で大型減税の期限切れと歳出の強制削減が同時に起き、一気に緊縮財政となる「財政の崖」問題は、間近に迫っている。
これらの危機に面し、火消しの役割を担ったのは中央銀行ばかりである。今月に入り、欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備制度理事会(FRB)が相次いで金融緩和策を打ち出し、日銀も追随するように金融緩和を決めた。しかし、だぶついたお金が穀物や原油相場を高騰させ、かえって景気を悪くする懸念が出ている。
何よりも、いくら危機対応だ、金融緩和策だと称しても中央銀行が国債を大量購入するのは「財政赤字を穴埋めするのに等しい危うさ」である。日米で政治のリーダー選びがあるとはいえ、政府や国会がなすべき仕事を怠り、そのツケを中央銀行が一身に背負う姿は危険であり、異常である。
緊縮財政をすべきなのは好況時であって、不況時に政府支出を減らすべきではない−ノーベル賞経済学者のクルーグマン教授は著書『さっさと不況を終わらせろ』で、こう主張する。IMFも新興国などに対し緊縮財政の休止や景気刺激策を求めている。
日本に限っては、予算は百兆円規模で緊縮財政ではない。単に使い方が間違っているのだ。例えば復興予算で昨年度は一兆円超が生かされずに国庫に返納され、被災地に関係ない流用もあった。不況を早く終わらせるには、発想を根本的に変える必要がある。
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