民主党が政権交代を果たし、鳩山由紀夫首相が華々しく外交デビューした三年前の国連総会は記憶に新しい。首相就任から一週間足らず。気候変動サミットでは、温室効果ガスの「25%削減」をぶち上げた。喝采を浴びた場面がよみがえる▼きのう、ニューヨーク入りした野田佳彦首相は二十七日未明(日本時間)、国連総会で演説に臨む。二年続けて日本の同じ首相が演説するのは、小泉純一郎氏以来のことだという▼「ここ数年で、最も賢明なリーダー」(米紙)と評されたことがあるように、野田首相は米国受けがいいようだ。米軍普天間飛行場の移設問題で迷走を重ねて、一年足らずで辞任に追い込まれた鳩山首相とは対照的だ▼それもそうだろう、と思う。日本政府が決めた「二〇三〇年代の原発稼働ゼロ」方針に関して、米高官らから閣議決定を見送るよう圧力をかけられると、あっさりと覆してしまう。露骨な内政干渉にも寛容な首相なのだから▼自国では住民の反対を受けて、輸送機オスプレイの飛行訓練を断念しながら、人口密集地にある「世界一危険」な普天間飛行場に配置を強行しようとする米国の姿勢にもとことん寛大だ▼国交正常化以降、日中関係が最大の危機に陥っている今、日米関係の重要性があらためてクローズアップされるが、米国依存にも限度がある。「主権在米」かと錯覚してしまう。