HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 39167 Content-Type: text/html ETag: "8ad63f-2113-a3308080" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 22 Sep 2012 22:21:15 GMT Date: Sat, 22 Sep 2012 22:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年9月23日(日)付

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 秋分の昼下がり、久しぶりにいわし雲を見た。うろこ雲とも呼ばれる巻積雲(けんせきうん)の正体は、高い空に薄く広がる氷の結晶だという。知れば涼しい豆知識である▼子規は「春雲は綿の如(ごと)く、夏雲は岩の如く、秋雲は砂の如く、冬雲は鉛の如く」と、四季の空を例え分けた。そそり立つ入道雲の巨岩が崩れ、白い砂石を散らした空が列島を覆う季節。熱帯夜から解放され、うだる日々を過去形で語れる喜びを思う▼先ごろの朝日川柳が嘆いた通り、まるで「春夏夏冬」の残暑だった。8月下旬から9月中旬、北日本の平均気温は統計史上の最高を記録したという。遅れがちな秋とは別に、10年の単位でみても温暖化は確実に進んでいる▼北極海を覆う氷が、過去最小になったそうだ。観測衛星「しずく」によると、今月16日の時点で349万平方キロ。9月は氷が小さくなる時期だが、1980年代には平均700万平方キロあったから半減である。わが国土の10倍が水と消えた計算だ▼陸地に恵まれ、人類の9割が暮らす北半球では、生産と消費が大量の二酸化炭素を吐く。温室効果で北極の氷は薄くなり、わずかな環境の揺らぎで解けてしまう。遠からず、極点を航行できるようになるかもしれない。悲しい新航路である▼午後の空に舞ういわしの群れは見る間に姿を変えていく。遅れても回る四季の繊細な歯車と、それを乗せてきしむ温暖化の巨大な歯車。小さい方が動いているうちに、大きいのを止める策を講じたい。むろん原発に頼らずに。


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