米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の「安全」宣言を信じる国民がいるのだろうか。普天間飛行場への配備ありきでは、国民、特に沖縄県民の理解はとても得られない。
操縦ミスで度々墜落する軍用機を安全と言えるのか。安全性に疑念が残るその飛行機を、かつて米国防長官自身が「世界一危険」と指摘し、日米両政府が日本側への返還で合意した米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)になぜ配備できるのか。
解せないことがあまりにも多すぎるが、日本政府の「安全」宣言を受け、米海兵隊は一時駐機している岩国基地(山口県岩国市)できょうにもオスプレイの試験飛行を始め、十月から普天間飛行場での本格運用を開始するという。
日本政府は安全性を確認するため、今年起きた二件の墜落事故原因を独自に調査するにはした。
しかし米側から提供された情報の検証が中心で、米側が墜落は「機体自体の要因でない」「人的要因が大きい」と結論づけた以上、それを覆す材料は出ようがない。
十月の普天間配備方針を追認する形だけの調査と言ってもいい。それで沖縄県民に配備受け入れを迫るのは無理というものだろう。
日本側はオスプレイの運用に注文をつけてもいる。事故の危険性が指摘される低空編隊飛行や「垂直離着陸モード」での飛行は米軍施設上空に限定する、低空飛行訓練は航空法の安全高度百五十メートル以上を順守し、原発や史跡、人口密集地の上空は避ける、などだ。
ただ「可能な限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの留保がつく。厳守される保証はない。
玄葉光一郎外相は「過去に特定の装備の導入について合意したことはない。率直に言って非常に難しい交渉だった」と胸を張った。
政府の努力はこの際、多とする。同時に、オスプレイ配備は日米安全保障条約が事前協議の対象としている装備の重要な変更に当たらず、日本側がその配備を止められないという現実からも目を背けるわけにはいかない。
オスプレイ配備は在日米軍基地の74%が集中する沖縄県民にさらに負担を強いる問題だけでなく、安保条約上の課題も惹起(じゃっき)する。
日米安保が日本を含む東アジアの平和に必要だとするのなら、基地提供という条約の義務を誰がどの程度負い、米側にはどこまで主張すべきなのか。沖縄県民に任せるのでなく、国民全体が自らの問題として考えなければならない。
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