HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 52687 Content-Type: text/html ETag: "ac25b8-3ab6-b28c9140" Cache-Control: max-age=3 Expires: Thu, 20 Sep 2012 22:21:04 GMT Date: Thu, 20 Sep 2012 22:21:01 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:社説
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2012年9月21日(金)付

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追加金融緩和―成長につなげる回路を

世界経済の減速に対応するため、日本銀行が追加の金融緩和に踏み切った。資産を買い入れる基金を10兆円拡大して80兆円とし、国債をその分、買い増す。市中に出回るお金を増やし[記事全文]

静岡原発条例―県民投票で再稼働問え

浜岡原発再稼働の是非を問う県民投票を実現する条例案が、静岡県議会に提案された。市民団体が必要数の3倍近い16万余の署名を集め、川勝平太知事に条例制定を求めた。知事は県議[記事全文]

追加金融緩和―成長につなげる回路を

 世界経済の減速に対応するため、日本銀行が追加の金融緩和に踏み切った。

 資産を買い入れる基金を10兆円拡大して80兆円とし、国債をその分、買い増す。市中に出回るお金を増やし、金利を押し下げて設備投資などの経済活動を刺激するのが狙いだ。

 日銀はこれまで景気を強気に見てきたが、欧州経済の悪化に加え、中国の景気減速もはっきりしてきた。このため、「日本経済が成長軌道を外れないように」(白川方明総裁)、手を打ったという。

 今月に入って、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備制度理事会(FRB)が相次いで緩和策を打ち出した。日銀が追随しないと、為替市場で円高が進むことを警戒した面もある。

 しかし、世界的な金融緩和も実体経済の成長につながる回路がなければ、投機筋を喜ばせるだけだ。余ったマネーが石油や穀物などの価格を高騰させ、かえって景気回復の足を引っ張りかねない。

 日本の優良企業は手持ち資金が潤沢で、金利が下がっても金融機関の貸し出しは伸び悩む。利ざやの縮小で、お金のない企業にリスクを取って融資するより、国債を買うほうが得という意識が広がっている。

 そもそも金利の低下で経済が刺激されるには、下がった金利でなら借金しても採算がとれると企業が判断できるようなビジネス環境が必要だ。新しい商品やサービスを、金融政策が生み出すことはできない。

 企業の投資意欲を高めるうえで、政治の役割は大きい。

 テレビや自動車に代表される既存の商品は需要が飽和しつつあり、医療や福祉など成長余力のある分野で規制や制度の改革を進めなければならない。

 なにより今の日本には、「新しい社会をつくる」ビジョンと政策が不可欠だ。

 その点で、脱原発と電力改革は格好のテーマである。思い切った政策転換で、電力市場への新規参入を促し、省エネ投資を活発化させ、スマートメーターのような次世代機器を普及させる。その経済効果はきわめて大きいはずだ。

 日米欧とも政治が有効な手を打てず、しわ寄せがすべて中央銀行に向かう構図は異様だ。

 ことに国の借金が突出して多い日本では、日銀が国債を買っても効果が出ないままだと、いずれ「財政赤字の尻ぬぐい」との疑念が深まり、国債相場が急落するリスクも高まる。

 成長に向けて政治が果たすべき役割を忘れてはならない。

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静岡原発条例―県民投票で再稼働問え

 浜岡原発再稼働の是非を問う県民投票を実現する条例案が、静岡県議会に提案された。

 市民団体が必要数の3倍近い16万余の署名を集め、川勝平太知事に条例制定を求めた。知事は県議会で「意思を表明し、県政に直接反映させたいという思いの表れであり、重く受け止める」と賛意を表明した。

 知事の判断を支持する。県議会は、再稼働をめぐる初の県民投票を実現させるべきだ。

 原子力のゆくえを地域の人々の意思で左右することには、反対意見も根強い。実際、東京都と大阪市で再稼働をめぐる投票の請求があったが、いずれも議会で否決された。

 原発が止まれば電気代が上がる。経済や雇用、安全保障など幅広い分野に影響が及ぶ。地域の人々がそこまで見越して判断ができるのか? 一時のムードに流されないか?

 住民投票にそうした限界がつきまとうという指摘は、必ずしも的外れとはいえまい。

 それでも意義は大きい。静岡県議会で、署名を集めた市民団体の5人の代表は、次のように説いた。

 「専門家や政治家に任せろといっても、彼らが危険性を軽視して事故になった。原発は先々の世代の生命や生活をも左右する。いま権力を握る人には背負いきれない重い問題だ」

 「事故が起きたら、結果は住民が受け入れざるをえない。真剣に考え、責任も引き受けることが、事故を経験した私たちの使命だ」

 選挙で代表を選ぶ間接民主主義を否定するわけではない。だが、代表に任せたらうまくいくとは限らない。生活に深くかかわるテーマで直接、民意を問うことは、その限界を補うことになる。投票する市民が当事者として悩み、判断することじたいに意味がある。

 条例案は投票結果の尊重を求めているが、法的な拘束力はない。川勝知事は「安全性が最優先だ。仮に9割の方が『原発を動かす』と言ったら、私は『いまは動かせない』という判断なので9割の方にご説明する。説明義務が大きくなる」という。

 現実は複雑だ。是か非かの二者択一で示される投票結果のとおりにならないことも起こりうる。それでも民意と向き合い、その末に下した結論について、次の選挙で審判を受ける。

 そんな政治と有権者の緊張関係が生まれてこそ民主主義は機能する。

 もし民意に縛られるのを嫌って聴かないなら、それは間接民主主義の奢(おご)りではないか。

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