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野田政権が、原発ゼロを目指す新しいエネルギー戦略の閣議決定を見送った。まことに情けない。新戦略は「原発ゼロ」を掲げながら核燃料サイクル事業を容認す[記事全文]
政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの沖縄・普天間飛行場への配備にあたって、「安全性は確認された」と宣言した。これを受けて、米軍は、山口県・岩国基地での試験飛行をへて、1[記事全文]
野田政権が、原発ゼロを目指す新しいエネルギー戦略の閣議決定を見送った。
まことに情けない。
新戦略は「原発ゼロ」を掲げながら核燃料サイクル事業を容認するなど、矛盾に満ちてはいたが、これでは肝心の脱原発までがうやむやになりかねない。
閣議決定の見送りは、米国や経済界、立地自治体が原発ゼロに強く反対しているためだ。
脱原発はきわめて大きな政策転換である。あつれきが生じないほうがおかしい。
大事なのは、原発に依存しない社会に向けて、政治が原発維持派との折衝を含め、きちんと取り組んでいるか、私たち国民が監視していくことだ。
折しも、きのう原子力規制委員会が発足した。
原子力の推進と一体だった業界監視から、国民の命と安全の確保を第一義とする仕組みへ、規制のあり方を根幹から立て直す重い任務を担う。
さっそく焦点となるのが、原発の再稼働問題である。
ストレステストの実施や旧原子力安全・保安院が定めた30項目の安全基準、関係閣僚による政治決定といった暫定的な枠組みは、ご破算になる。
いくつもの原発で、大地震や敷地内外の活断層が及ぼす影響が懸念されている。対象範囲を拡大した周辺自治体の本格的な防災対策もこれからだ。
規制委は、純粋な科学的見地から、妥協を許さない基準づくりと審査を貫いてほしい。
気になるのは、野田内閣が原発再開の可否をすべて規制委に委ねるような姿勢を示していることだ。
たとえ規制委がお墨付きを与えたとしても、「絶対安全」は存在しない。原発のリスクがゼロにならない以上、再稼働は最小限に抑えるべきだ。
どの原発を動かし、どの原発を止めるか。その判断は、安全性に加えて、電力需給などの観点からも検討すべきものだ。これは規制委ではなく、まさに政治の仕事になる。
政府は具体的な指標づくりの場を設け、作業に入るべきだ。電力需給の検証のほか、地域を越えた融通の可能性、電気料金への影響などが検討の対象になる。国会議員有志が発表した「原発危険度ランキング」のような仕組みも参考になろう。
野田政権は、新戦略を踏まえたエネルギー基本計画を閣議決定するという。
ここで原発ゼロの目標を盛り込めないなら、民主党政権は国民から完全に見限られることを覚悟すべきだ。
政府は、米軍の新型輸送機オスプレイの沖縄・普天間飛行場への配備にあたって、「安全性は確認された」と宣言した。
これを受けて、米軍は、山口県・岩国基地での試験飛行をへて、10月中に普天間での本格運用を始める方針だ。
だが、このままでは日米同盟はかえって危うくなる。沖縄県民の強い反発を考えると、そう危惧せざるを得ない。
日米両政府で合意した安全対策は、たとえばこんな内容だ。
低空飛行訓練は高度約150メートル以上、原子力施設、史跡、人口密集地を避ける。米軍施設・区域周辺では人口密集地を避け、海上を飛行する。回転翼から固定翼への「転換モード」での飛行は、時間を短くする。
「可能な限り」とか「運用上必要となる場合を除き」といった留保が、たくさんついている。10月配備ありきで日米両政府が合意を急いだ、ととられても仕方ない。
両政府はまた、今年起きた2件の墜落事故について、機体に不備はなく、人為ミスが原因だと強調する。それはわずかなミスでも墜落するということではないのか。不安は拭えない。
政府は今後も、オスプレイの運用について米側と話し合っていくという。
その際、忘れてならないのは、この問題の根っこにあるのは、普天間返還への道筋が一向に示されないということだ。
これが解決されない限り、オスプレイ配備は、逆に日米安保体制のリスクとなりかねない。
市街地のど真ん中にある普天間飛行場の周辺では、緊急着陸できる余地も少ない。小さなミスやトラブルでも、大きな被害につながりやすい。
万一の事態など想定したくないが、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は事故が起きれば、全米軍基地の「即時閉鎖撤去」を求めると言っていた。そうなれば安保体制の致命傷になる。
政府は一貫して、日米安保条約上、配備は拒否できないと説明してきた。問題がこじれると同盟がゆらぐといい、対日攻勢を強める中国を利することになるとの声も聞かれた。
もちろん、日米安保体制は日本の安全に欠かせないし、日米同盟にヒビが入るのは望ましいことではない。
だが、すでに沖縄では、問題はオスプレイの安全性という次元を超え、日米両政府への強烈な不信となって広がっている。
これをくいとめるには、普天間返還の実現でこたえるしかない。日米両政府は、原点に戻って検討を急ぐべきだ。