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8月15日 「史実」の国際理解を広げたい(8月15日付・読売社説)

 ◆日本の発信・説得力が問われる◆

 あれから67年。終戦の日を迎えた。繁栄する日本の礎となった戦没者を追悼する一日である。

 ところが、この日に照準を合わせたかのように韓国の李明博大統領が島根県・竹島への訪問を強行して、はばかるところがない。極めて残念だ。

 なぜ今、韓国がこうした暴挙に出たのだろうか。

 李大統領は、領有権をめぐる日韓対立が続く竹島の支配を誇示するとともに、いわゆる従軍慰安婦問題に言及した。首脳会談で提起したのに日本政府が「誠意を示していない」とも語っている。

 ◆あおられた反日感情◆

 政権末期で求心力を失った李大統領は、「初めて竹島を訪問した国家元首」という“業績”を残そうとしたとの見方が一般的だ。

 日本の植民地支配を受けた韓国には根強い「反日感情」がある。そこに訴えた大衆迎合主義(ポピュリズム)とも言えよう。

 ロンドン五輪で男子サッカーの3位を決める日韓戦の後、勝利した韓国の一選手が「独島(竹島の韓国側呼称)はわが領土」と書いた紙を掲げる一幕があった。五輪憲章が禁止する、競技会場での政治的活動であるのは明らかだ。

 李大統領の行動が、韓国国民のナショナリズムをいたずらにかきたてたのは間違いない。

 良好に見える日韓関係も、政治に歴史認識問題が絡むと、一気に崩れる脆弱(ぜいじゃく)さをはらんでいる。歴史認識の違いを乗り越え、建設的な関係を築いていく努力が日韓双方に必要である。

 一方、韓国は主要20か国・地域(G20)首脳会議や核安全サミットの主催国ともなった。国連事務総長には韓国人が就任している。サムスンや現代自動車など日本企業に匹敵する世界的な企業も数多く誕生した。

 大統領自身、「日本はかつてのような国際的な影響力はない」と述べている。韓国が急速な経済成長を遂げた結果、以前ほど日本との関係を重視しなくなった面にも留意しなければなるまい。

 日本は竹島問題を国際司法裁判所に提訴する方針だ。同時に、韓国に対して、不法占拠をこれ以上強化しないよう強く自制を求めるべきである。

 ◆領土問題に積極姿勢を◆

 ロシアとの関係でも、同様の問題が浮上している。

 一昨年11月、当時のメドベージェフ露大統領は北方領土の国後島を訪れた。今年7月にも再び首相として国後島を視察している。

 ロシア側は先の大戦の結果として北方領土を領有し、しかも独自に開発を進めていることを内外にアピールしたいのだろう。

 さらに、極東サハリン州で石油・天然ガス開発は着実に進んでおり、もはや北方領土への日本の支援は必要ない、と日本を牽制(けんせい)する狙いもうかがえる。

 実際、択捉島や色丹島では、韓国の企業が開発に参画している。このままでは北方領土の「ロシア化」が進むのは避けられない。

 一方で、経済・軍事力で膨張を続ける中国に向き合うためにも、日露関係の強化は欠かせない。

 政府は、複眼的な視点に立って北方領土問題解決への戦略を練り直さなければならない。

 韓国やロシアの主張する「歴史」が世界に拡散しつつある。日本政府は、もっと危機感を持って対処すべきである。

 一昨年、米国ニューヨーク近郊の小さな町の公立図書館に「日本軍に拉致された20万人以上の女性と少女のために」などと記された慰安婦の碑が設置された。

 韓国系米国人によって、こうした碑を米国各地に建設する運動が進められている。米国発の対日圧力を強めるのが狙いだろう。

 慰安婦問題がここまで広がっている根底には、1993年の河野官房長官談話の存在がある。

 ◆誤解広める河野談話◆

 日本の官憲が組織的、強制的に女性を慰安婦にしたかのような記述があり、誤解を広めることになった。しかし、結局、こうした事実を裏付ける資料的な根拠は見つからなかった。

 「日本軍によって拉致され、慰安婦にされた」と米国で喧伝(けんでん)されているが、この談話の存在のため、日本政府が有効な反論ができないことは極めて問題である。

 日本政府は、竹島、北方領土、そして慰安婦などの歴史の事実関係を、国内はもとより、広く海外にも説明すべきだ。

 終戦を思い起こす8月の機会に、国際社会に日本の立場を積極的に発信し、理解と支持を獲得していくことが大切である。

2012年8月15日01時37分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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