オリンピックの魅力は多面性にある。さまざまな競技、さまざまな選手。多様さ、多彩さが見る者を楽しませる。閉幕を迎えたロンドン五輪も、そんな魅力を存分に味わわせてくれた。
三十八個にのぼる過去最高のメダルを獲得した日本代表。その活躍は、ふだん注目されることの少ない競技にも光を当てた。
フェンシングやアーチェリーのメダルは、あまり一般になじみのない競技の、繊細で奥の深い面白みをじっくりと味わう機会をつくってくれた。アマチュアボクシングやバドミントン、重量挙げ、レスリングのグレコローマンなども見る機会が多いとはいえないが、今回は日本勢の大健闘によって、世界の頂点で戦う選手の勇姿をたっぷり見ることができた。スポーツへの視野を広げた人々も多かろう。いつもはさほど脚光を浴びない競技者たちの奮闘が、オリンピックならではの多面的な楽しみをもたらしたと言っておきたい。
女子競技の存在感がいっそう増してきたことも、オリンピックの幅を広げた観がある。今回は出場国・地域のすべてから女子選手が参加し、全競技で女子種目が行われた。女性スポーツの発展を加速させた大会とも言えそうだ。
その流れは日本代表でも顕著だった。金メダル七個のうち四個までが女子。銀にはとどまったが、サッカーのなでしこジャパンや卓球団体の戦いぶりも鮮烈だった。エリートやスターばかりではない女性たちの活躍が、これまで関心を持たなかった人々をも引きつけたという功績もありそうだ。
多様性という点ではこの選手にも触れておきたい。陸上の男子400メートルなどに出場した南アフリカのオスカー・ピストリウス。世界が注目する中で果敢に走った両脚義足選手の姿は、さまざまな可能性を追い求め、実現していく舞台としてのオリンピックに、いかにもふさわしいものだったといえる。
大会の全体像に目を転じると、今回は、国の威信をかけての巨大さや豪華さばかりが前面に押し出された前回の北京とはちょっと違う方向性もかいま見えたようだ。競技や参加者も多様なら、大会そのもののあり方も開催都市の文化や特性によって多彩、多様なのがオリンピック本来の姿であろう。そうした理想や魅力をどう引き継ぎ、どう増していくか。東京招致のことも含め、ロンドンの閉幕を、五輪の今後をあらためて考えるスタートとしたい。
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