HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 10 Aug 2012 21:21:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 伊勢神宮の内宮(ないくう)へと導く宇治橋は、聖と俗との架…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 伊勢神宮の内宮(ないくう)へと導く宇治橋は、聖と俗との架け橋だという。二十年に一度の式年遷宮のたび架け替えられ、橋の安泰を願い、親子三代そろった夫婦が渡り初めをする▼二十一歳の若者が、愛読する詩集の余白に書き付けた詩がある。<ながいきをしたい/いつかくる宇治橋のわたりぞめを/おれたちでやりたい/ながいとしつき愛しあった/嫁女(よめじょ)ともども/息子夫婦ともども/花のような孫夫婦にいたわられ/おれは宇治橋のわたりぞめをする>▼詩を書いた竹内浩三は、伊勢に生まれた。日本大学専門部映画科に進み、映画監督を目指した。宮沢賢治の世界を愛して、「雨にもまけず」と題するシナリオも書いた。だが、映画を作る夢も、宇治橋を孫夫婦と渡る夢もかなわなかった。二十三歳の春、フィリピンで戦死した▼その足跡を網羅した『定本竹内浩三全集 戦死やあはれ』(藤原書店)が、八月十五日に出版される。既に二度全集が出されていたが、「宇治橋」など新たに見つかった作品を収めた決定版という▼七百五十五ページある本は、持てば重い。けれど、これだけの才能を持った人間の全作品が、たった一冊に収まってしまった事実を思う時、別な重みを感じる▼<うたうたいは/うたうたえときみいえど/うたうたうほかわざなしとおもえど/くちおもくうたうたえず>。浩三が歌えなかった歌を思う。

 

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