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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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式は今年も、被爆者の合唱団「ひまわり」の歌で始まった。●もう二度と作らないで わたしたち被爆者を――(●は歌記号〈いおり点〉)。メンバーの胸に咲く黄色の大輪は、脱原発の集会でもなじみの花である▼原爆の日を迎えた長崎。田上富久(たうえ・とみひさ)市長は平和宣言で、去年に続き原発事故に触れた。「放射能に脅かされることのない社会を再構築するため、新しいエネルギー政策の目標と、そこに至る明確な具体策を示して下さい」▼広島市長も、先の宣言で「市民の暮らしと安全を守るエネルギー政策」を求めた。傷あとに根ざす被爆地からの訴えは重い。放射能の恐ろしさを知り尽くす人と土地がいま欲するのは、原子力を「乗り越える」ことではないか▼「第三のヒバク地」福島も、広島、長崎との連帯に動く。両市は放射能の怖さを語る証人であり、復興の目標でもある。炎暑に巡り来る二つの式典は、平和とともにエネルギーの将来に思いをはせる日となった▼被爆者の平均年齢は80歳に迫る。「もう二度と」の願いは、あろうことか国内で裏切られた。核の真実、本質を肌に刻んだ人たちが元気な間に、太陽光なり風力なり、生き物に優しい自然の恵みを「一人前」の資源に育てたい▼長崎からの放送を、エアコンのない部屋で見た。うまい具合に涼風が吹くこともなく、セミの合唱だけが網戸を抜けてくる。節電が習いとなり、暑さには多少の免疫ができた。世にそれがあるうちが大転換の好機となる。少なくとも、何十年という悠長な話ではない。