HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52110 Content-Type: text/html ETag: "18545f-177b-4c6c39f56f5c9" Expires: Wed, 08 Aug 2012 21:21:54 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 08 Aug 2012 21:21:54 GMT Connection: close 発達障害判決 厳罰より支援の拡充が大切だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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発達障害判決 厳罰より支援の拡充が大切だ(8月9日付・読売社説)

 発達障害の実情をどれだけ理解して厳罰を選択したのだろうか。

 姉を刺殺した40歳代の男の裁判員裁判で、大阪地裁は、懲役16年の求刑を超える懲役20年の判決を言い渡した。被告を発達障害の一つのアスペルガー症候群と認定し、殺人罪の有期刑の上限を適用した。

 「障害に対応できる受け皿が社会になく、再犯の恐れがある」というのが、判決の理由である。「許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序の維持に資する」とも指摘した。

 被告は小学5年の頃から自宅に引きこもり、それを姉のせいだと思い込んで恨みを募らせた。世話になった姉を刺殺するという犯行は、許されるものではない。

 だが、障害を理由に重い刑を科し、刑務所に長く収監しておこうという考えは、短絡に過ぎよう。障害者への偏見を助長しかねない判決と言える。

 被告の障害は事件後、検察側の精神鑑定で判明した。

 脳機能障害が原因とされるアスペルガー症候群の人は、対人関係の構築が難しい。相手の心情をくんだり、自分の内面を表現したりするのが苦手だが、反社会的行動に直接結びつくわけではない。

 裁判員に障害の特性を正しく理解してもらうために、裁判官は十分な対応をとったのか、首をかしげざるを得ない。

 判決が「被告は十分な反省に至っていない」と断じた点にも疑問が残る。深く反省していても、それをうまく表現できないアスペルガー症候群の特性を慎重に検討したうえでの判断だったのか。

 障害者の「受け皿がない」という現状認識も、不可解だ。

 2005年の発達障害者支援法施行後、全国に支援センターが設置され、相談に応じている。刑務所を出た障害者らの再犯を防ぐため、就労支援などを行う施設も開設された。

 こうした援助の動きにも水を差す判決と言えるだろう。

 障害者支援団体から「事実誤認と無理解に基づく判決」との批判が出ているのも、無理はない。

 罪を犯した障害者を立ち直らせるには、福祉、医療、教育、労働の各施設が地域で連携を強化し、住居や就労などの支援体制をさらに拡充することが必要だ。

 刑務所においても、発達障害に対応した矯正プログラムなどの整備を検討すべきではないか。

 厳罰よりも、障害者への理解をさらに深め、社会全体で支えていく姿勢が何より大切である。

2012年8月9日01時28分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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