取り締まりが難しい「脱法ハーブ」で、自治体連携の規制が動きだす。すでに独自の条例で対応している東京都に、愛知県と大阪府も倣う。現場に近い強みを生かしたスピード感ある手だてを望む。
いきなりだが、正論だった。大村秀章・愛知県知事の七月中旬の会見。麻薬に似た症状があり危険な「脱法ハーブ」を規制する条例案を九月議会にも出したいと述べた。「極めて有害。東京、愛知、大阪の三大都市圏で情報を共有し取り組む」。さらにきのう、提案を正式に表明した。
愛知県内では七月までの半年間に、脱法ハーブの吸引などで意識障害になり救急搬送された患者が八十五人。名古屋市内では二十代男性が死亡した。「極めて有害」は、まさにその通りである。
実は大村発言より前の六月末、すでに大阪府の松井一郎知事が、脱法ハーブの販売や製造を禁止する条例案を九月議会に提出する意向を明かしていた。自前の化学研究機関を持ち、早くから「薬物乱用防止条例」で規制している東京都の協力を得て、と。
規制は本来国の役割だが、小回りに欠け何ごとも手間がかかる。条例はいわば自治体の法律。その“先駆者”東京都に、愛知と大阪が、足並みをそろえようとするのは、それだけ薬物の健康被害が深刻化しているからだ。
都の条例制定は二〇〇五年。健康被害の恐れの強い種を「知事指定薬物」に定めて製造や栽培、使用などを禁止。警告や命令に従わない悪質な違反者には二年以下の懲役か百万円以下の罰金を科す。
輸入品がほとんどのため海外薬物のデータベース化も始めた。販売を確認したらすぐ規制する「速攻作戦」に出る。府県には、こんな新しい試みも参考になろう。
国(厚生労働省)より東京都の方が、危険性への認識が的確だったというほかない。その厚労省も規制策を次々に打ち出し始めた。例えば七十七種の指定薬物のうち四種を麻薬に格上げ、取り締まりを一層強めた。四方八方から追い詰められ、慌てて在庫処分する業者まで出てきた。
三月末時点で、脱法ハーブなどを店頭やネットで扱う販売業者は二十九都道府県で三百八十九。東京、大阪、愛知の順に多く、この三自治体がまず連携して条例規制をする。業者への圧力はむろん、目に見えぬ効果も期待したい。
業者は全国に及ぶ。有害薬物を野放しにせぬよう他の自治体も条例化を前向きに検討してほしい。
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