申し訳ないけれど、お笑いタレントたちが、楽屋話を連発する安直なテレビ番組を思い出してしまった。交わされている会話は深刻なのに頻繁にかぶさる「ピー音」に脱力してしまう▼東京電力は福島第一原発事故の直後に、本店と現場をつないだテレビ会議の録画映像をようやく公開した。計百五十時間の三分の二は音声がない。残る三分の一も千六百六十五カ所で音声が消され、幹部以外の社員の顔はぼかしが入る▼映像の修整は社員のプライバシーを守るためだと東電は言い張る。十万人以上が避難生活を続ける大事故を起こしながら、ここまで情報公開に後ろ向きな姿勢なのは、何かを隠したいのではないか、と疑われても仕方ない▼汚染水を海に放出した時、どんな議論をしたのかなど、三月十六日以降のテレビ会議の内容も事故の経過を解明するために重要な資料である。なぜ公表しないのか不可解だ▼3号機が水素爆発を起こした時、吉田昌郎所長(当時)が本店に叫ぶように報告する場面、官邸からもせっつかれているベントがまったく進まない様子など、不十分な公開ではあるが、一時間半のダイジェスト版を見るだけでも理解できたこともある▼想像を絶する事態の中で、東電の幹部たちはあまりに無力であり、深刻な事故を起こした原発は、人間の手では制御することはほとんど不可能だという事実だ。