HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 38024 Content-Type: text/html ETag: "1dcc618-20a3-1cb99ec0" Cache-Control: max-age=1 Expires: Tue, 07 Aug 2012 03:21:11 GMT Date: Tue, 07 Aug 2012 03:21:10 GMT Connection: close 朝日新聞デジタル:天声人語
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天声人語

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2012年8月7日(火)付

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 1960年のローマ五輪、マラソンはエチオピアの無名選手アベベ・ビキラが制した。裸足で走り切った逸話が残る。アベベは東京で連覇を果たし、異色ではなく偉業でオリンピック史に刻まれた▼ロンドンでも「裸足」が注目されている。義足ランナーとして初めて五輪に参加し、400メートルに出た南アフリカのオスカー・ピストリウス選手(25)だ。準決勝で敗れはしたが、同走の選手が敬意の印にゼッケンの交換を求めてきた。9日にはリレーを走る▼両すねの骨を欠いて生まれ、程なく膝(ひざ)から下を切断した。「私の義足は靴と同じ」。10代から短距離を磨き、北京パラリンピックでは敵なし。その走りに、工業デザイナーの山中俊治(しゅんじ)慶大教授は「究極の機能美」を感じた▼「ブレード(板ばね)の弾力を巧みに使って送りだされる高速の足元は、その薄さゆえに走行中はほとんど映像から消えてしまう。飛んでいるようにさえ見えた」と、近著『カーボン・アスリート』(白水社)にある▼肉体との一体感は猛練習のたまものだろう。称賛の一方で、義足は加速装置ではないのか、といった批判もくすぶる。「道具によるドーピング」の声に抗し、彼は出場規定のハードルを幾つも越えてきた。たどり着いたのがロンドンだ▼10年前に亡くなった母親の言葉がいい。「オスカー、敗者とは最後にゴールする人じゃない。はなから出場を諦めちゃう人を言うんだよ」。五輪スタジアムを包む喝采は、なるほど、勝者に向けた響きである。


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