日本航空の株式の再上場が承認された。再建過程では国の支援のあり方や他社との公平な競争環境という課題も浮上した。検証が必要だが、日航破綻の一因だった政治の不当介入は厳に慎むべきだ。
またも政治に弄(もてあそ)ばれることにならないか。V字再建した日航の再上場をめぐり、政策論を通り越して政争の具にしかねない動きが目につく。多分に衆院解散・総選挙を意識したもので、明らかなオーバーランである。
問題の背景にあるのは、法的整理に伴う手厚い支援で日航が二年半強という異例のスピードで再建、筋肉質の企業に生まれ変わった結果、ライバルの全日本空輸の経営を脅かしかねない競争環境になったことである。
再上場により、投入した公的資金を上回る額が回収でき、国民負担が回避できるという点では歓迎すべきだ。民主党政権では数少ない成功例で、政権の実績として喧伝(けんでん)される可能性は大である。
これに対し、自民党が党の部会で再上場反対を決議するなどの動きを強めている。いわく日航再建は競争をゆがめ、政権の手柄というより、むしろ失敗だとして、再上場の条件まで突き付けた。
確かに、再建過程について検証すべき点はある。三千五百億円に上る公的資金の注入額や銀行団による五千二百億円もの借金棒引き、さらに過去の巨額赤字に相当する額まで毎年の利益を相殺できる制度により、法人税の免除額が九年間で推計四千億円に上る“手厚い支援”などである。
それらの結果、日航と全日空の二〇一二年三月期連結決算では、日航の営業利益は全日空の二倍を超えた。自力で経営してきた全日空を今後も圧迫しかねない。
だからといって自民党が日航に地方路線の拡充や、免除された法人税の自主納付などを要求するのは、筋違いである。よく思い出してもらいたい。そもそも日航が破綻した一因は、政治の圧力で地方の赤字路線を多く抱え込んだからではなかったか。
自民党が、日航のシンボルマークの鶴に引っかけて「“鶴”には恩返しをさせなくてはいけない」と国土交通省などに迫るのは、勘違いも甚だしい。
国会の場で政策論として審議するのは大いに賛成だ。国の支援は過剰だったのではないか、企業再建と競争をどう両立させるのか。今後、同様のケースも念頭に詳細に検証し、企業再生におけるルールを明確にすべきである。
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