HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 03 Aug 2012 00:21:56 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 子どもが大きくなるに従い、親は衰える。自然の摂理だ。だが…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 子どもが大きくなるに従い、親は衰える。自然の摂理だ。だが、東京都内に住む北谷好美さん(54)の場合、それはむごい形をとった▼幼い娘が上手に歩けるようになっていくのに、自分は歩けなくなった。心は活発な母親のまま、その手でわが子を抱くこともできなくなる▼筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経の異常で呼吸することもできなくなる難病だ。人工呼吸器を着ければかなりの延命が可能だが、患者の六割以上が装着を拒んで死んでいく。自分の無力さ、家族の負担の厳しさ。北谷さんらの手記『生きる力』(岩波書店)は生きることの重さを教えてくれる▼閉ざされてきたALS治療の重い扉が、開いた。京都大などのチームがiPS細胞を使い、治療薬の素(もと)となる化合物を世界で初めて見つけたという▼iPS細胞の開発者としてノーベル賞候補に目される山中伸弥さんには、難病の患者さんから声が寄せられる。わが子の治療が大変な状況だというのに、研究者の健康を気遣ってくれる人がいるという。そんな優しさが、砂浜で針を探すような研究の力なのだろう▼北谷さんはメールで、近況を「発症から二十年経(た)っても『きっと治る』という思いがますます強くなっているのが不思議です」と教えてくれた。娘さんは今、十七歳。日本発の研究が、母娘が抱き合う夢をかなえてくれれば、と思う。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo