原子力発電はコストが高く、経済的に見合わなくなる−。脱原発派の主張ではない。原子炉メーカー世界大手の一角を占めるゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト最高経営責任者が最近、英紙フィナンシャル・タイムズに語った内容である▼発言の背景にあるのは「シェールガス革命」だ。地中深い岩盤から採取されるシェールガスの増産が進み、天然ガス価格はここ十年来の安値水準を続けている▼イメルト氏は原発はコストが高いと指摘、「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」「天然ガスが非常に安くなり、いずれかの時点で経済原則が効いてくる」と述べて、天然ガスと風力、太陽光の組み合わせに向かっている世界の趨勢(すうせい)を語っている▼ドイツの巨大企業シーメンスは昨年九月、独政府が原子力エネルギーからの脱却を決めたことを受け、原発事業から撤退する方針を明らかにした。原発をもはや時代遅れのエネルギーとみる視点が広がっている▼将来のエネルギー政策について政府が国民の声を直接聞く意見聴取会がきのう、福島市内で開催された。発言した三十人のうち二十八人が二〇三〇年の原発依存度「0%」を主張した▼事故を起こしてしまった時の想像を絶するコストを考えれば、市場原理から見ても原発に未来はない。「リアルな原発のたたみ方」を熟議する時期が来ている。