HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 02 Aug 2012 02:22:34 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:中国のデモ 民衆の不満を侮らず:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

中国のデモ 民衆の不満を侮らず

 中国江蘇省南通市で、日系企業の排水計画に反対する大規模デモが起きたことは、民衆の不満の大きさをよく示している。中国当局は、住民の健康と環境を守るため十分な方策をとってきたのか。

 抗議を受けたのは、製紙大手・王子製紙の現地法人の工場排水を、約百キロ離れた海へ排水するパイプラインを引く計画だった。

 環境問題が主因のデモは近年、珍しいことではない。

 先月、四川省では金属精錬工場の建設に反対する一万人の抗議デモがあり、建設は中止に追い込まれた。昨年八月には、遼寧省で化学工場の移転を求めるデモが起き、当局は移転を約束した。

 中国の環境汚染は水、土、大気などあらゆる分野に及び、主要河川の七割近くは汚染が高いレベルにあるという。高度成長時代の日本の公害と同じような深刻な危機に直面している。

 それなのに、地方政府は環境保護での住民意識の高まりに反応できず、十分な説明責任を果たしてこなかった。経済成長一辺倒で、最も大切な命の問題を軽視してきたと批判されても仕方がない。

 富裕層なら、人間ドック受診のために訪日するような時代だ。生命や健康に大きな影響を与える事業を、住民への説明や対策が不十分なまま進めるのであれば、同じようなデモは避けられまい。

 中国社会科学院によると、中国では二〇〇七年に年間八万件以上の抗議行動があったという。今では年二十万件近いという指摘もある。貧富の差の拡大や、役人の汚職、腐敗が主な原因である。

 経済発展と不公平、不正義が同居している。この種のデモが社会不満を持つ群衆に火をつけ、暴動に拡大しないかも心配だ。

 今回も一部が暴徒化し、共産党や地元政府の庁舎などを破壊した。静観していた当局は、最終的に治安部隊を投入して鎮圧したが、数十人のけが人が出てしまった。武力で鎮圧するより、デモの原因となる社会問題を解決することが優先されるのはもちろんだ。

 王子製紙の工場は中国の環境基準に適合するよう処理をして排水していたという。だが、パイプラインの白紙撤回で「今後の事業計画に支障が出るかもしれない」と懸念する。

 海外への進出企業は、国情の違いや国民の意識の変化をよく把握し、何よりも命にかかわる環境問題などでは、地元政府と協力して万全の対策をとってほしい。

 

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